抗精神病薬のまとめ

プラセボとの比較による抗精神病薬の有効性に関するデータを下記に示す。  1)クロザピン(商品名:クロザリル) ・多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)に分類されている ・ドパミン受容体を遮断すると共にセロトニン受容体も遮断するため、錐体外路症状を誘発しにくい ・抗コリン作用により口渇、便秘、尿閉などの副作用を起こすことがある ・治療抵抗性の統合失調症に用いられる ・指定施設での入院治療を有する ・鎮静作用が強力 ・体重増加を起こしやすい ・重大な副作用として無顆粒球症や心筋炎を起こすことがある 2)オランザピン(商品名:ジプレキサ) ・多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)に分類されている ・ドパミン受容体を遮断すると共にセロトニン受容体も遮断するため、錐体外路症状を誘発しにくい ・クロザピンに比べ、抗コリン作用による副作用を誘発しにくい ・体重増加を起こしやすい ・糖尿病患者には用いることができない ・鎮静作用を有する ・双極性障害のうつ、躁症状の改善に用いられる ・抗悪性腫瘍薬投与による消化器症状(悪心・嘔吐)に用いられる MARTAによる体重増加について MARTA服用による体重増加には、ヒスタミンH1受容体遮断作用およびセロトニン5−HT2C受容体遮断作用が関与していると考えられている。 MARTAによる増加が認められた場合には、食事療法、運動療法を行うとともに、薬剤変更(アリピプラゾール、ブロナンセリン、ハロペリドールなど)を検討する必要がある。 3)リスペリドン(商品名:リスパダール) ・セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)に分類されている ・ドパミン受容体を遮断すると共にセロトニン受容体も遮断するため、錐体外路症状を誘発しにくい ・クロザピンやオランザピンに比べ、体重増加を誘発しにくい ・脳内移行性が悪いため、高プロラクチン血症による乳汁分泌などを誘発しやすい ・α受容体遮断作用により起立性低血圧を誘発することがある 4)パリペリドン(商品名:インヴェガ) ・セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)に分類されている ・リスペリドンの活性代謝物である ・薬物放出制御システム(OROS)を用いた徐放化製剤である 5)ハロペリドール(商品名:セレネース) ・ブチロフェノン系抗精神病薬に分類されている ・ドパミン受容体遮断作用が強いため、錐体外路症状や高プロラクチン血症を誘発する ・体重増加の副作用をほとんど示さないため、MARTAによる体重増加が問題となる場合の代替薬として用いられることがある 6)クエチアピン(商品名:セロクエル、ビプレッソ) ・多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)に分類されている ・D受容体遮断作用が弱いが、H1受容体、α1受容体遮断作用が強い ・鎮静作用を有しているため、鎮静目的で使用されることがある ・糖尿病患者には用いることができない ・抗コリン作用による副作用は現れにくい ・セロクエルとビプレッソでは適応症が異なる セロクエル:統合失調症 ビプレッソ:双極性障害のうつ症状の改善 7)アリピプラゾール(エビリファイ) ・ドパミン受容体部分作動薬(DPA)に分類されている ・D受容体部分刺激作用に加え、5−HT1A部分刺激作用、5−HT2A遮断作用を有する ・錐体外路症状が現れにくい ・鎮静作用、抗コリン作用をほとんど示さない ・体重増加の副作用をほとんど示さないため、MARTAによる体重増加が問題となる場合の代替薬として用いられることがある ・統合失調症以外にうつ状態や双極性障害における躁状態に用いられる 8)クロルプロマジン(商品名:コントミン、ウインタミン) ・フェノチアジン系抗精神病薬に分類されている ・副作用として、錐体外路症状、過鎮静、起立性低血圧、口渇、便秘などを起こしやすい 9)アセナピン(商品名:シクレスト) ・多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)に分類されている ・他のMARTAに比べ作用が弱い ・MARTAの中では体重増加を起こしにくい ・舌下錠であり刺激感があるため、服薬指導時、説明する必要がある ・5−HT1A受容体刺激作用を有することから不安やうつに対する効果も期待できる → Read More

鎮痛薬

鎮痛薬 痛みは、危険信号を伝えるための機能を有しているが、過度に痛みが発生すると、生活の質の低下や体力の消耗が伴う。この痛みを取り除くために用いられるのが鎮痛薬である。鎮痛薬には、中枢性鎮痛薬(麻薬性鎮痛薬、非麻薬性鎮痛薬)、非オピオイド鎮痛薬、神経障害性疼痛治療薬などがある。 1 痛覚伝導路と鎮痛薬 1)痛みの種類 痛みは発生の機序により、器質的疼痛と非器質的疼痛(心因性の痛みなど)に分類される。器質的疼痛には、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛がある。 ●侵害受容性疼痛 侵害受容性疼痛には、組織の障害による痛みである体性痛、臓器の炎症や閉塞、圧迫、臓器被膜の急激な伸展による痛みである内臓痛がある。 例) ブラジキニンによる刺激で発生する痛み 冷たいもの、熱いものによる刺激で発生する痛み 鋭利なものによる刺激で発生する痛み ●神経障害性疼痛 神経が障害されることによる痛み、一説では、痛みの伝達に関与するカルシウムチャネルが過剰に発現することが関与しているとされている。 例) 帯状疱疹後の痛み 糖尿病による末梢神経障害により発生する痛み 2)痛みの伝達 2次ニューロンの軸索には、新脊髄視床路と旧脊髄視床路がある。 ●新脊髄視床路(即時痛を伝える経路) 脊髄後角→視床→大脳皮質知覚領 ●旧脊髄視床路(遅延痛を伝える経路) 脊髄後角→延髄網様体→視床→大脳皮質知覚領 <オピオイド鎮痛薬の作用点> オピオイド鎮痛薬は中脳、延髄に存在するオピオイド受容体に結合し、脊髄後角への下降性抑制系を賦活化して、鎮痛作用を示す。また、1次ニューロンに抑制的に作用するとともに視床や大脳辺縁系にも作用して鎮痛作用を示す。 2 オピオイド受容体  モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬およびオピオイドが結合する受容体を一括してオピオイド受容体という。オピオイド受容体には、β–エンドルフィンに高親和性を示すμ受容体、ロイシン・エンケファリンに高親和性を示すδ受容体、ダイノルフィンに高親和性を示すκ受容体が存在する。 3 オピオイドの薬理作用 オピオイド受容体は、中枢以外にも多くの場所に存在することから、オピオイドは鎮痛作用のみならず多くの薬理作用を有する。 4 麻薬性鎮痛薬 1)アヘンアルカロイド ①→ Read More

クロマトグラフィーを用いた定性、定量

クロマトグラフィーを用いた定性、定量 1 定性   日本薬局方において、医薬品の確認試験として薄層クロマトグラフィーが用いられている。薄層クロマトグラフィー用いた確認試験では、Rf値が用いられる。 <参考:薄層クロマトグラフィーの概要> 薄層板上の原線に試料をスポットした後、風乾し、その後、展開溶液(移動相)に入れておく。一定の距離を展開後、薄層を取り出し、原線上のスポットの位置から展開した溶媒先端までの距離(a)と原線から展開後の試料のスポットの中心までの距離(b)を測定し、Rf値を求める。 2 定量   クロマトグラムを用いて、定量する際には各ピークの大きさを測定する必要がある。ピークの大きさを表す指標として、ピーク高さやピーク面積が用いられる。 1)ピーク測定法   ピーク測定法には、ピーク高さ法とピーク面積法がある。 2)定量法   クロマトグラフィーを用いた定量法では、通例、既知量の被検成分の標準品を用いて、検量線を作成し、その後、試料のピーク高さやピーク面積の値を求め、その値と検量線により被検成分の定量を行う。検量線を用いる定量法には、絶対検量線法、内標準法、標準添加法がある。 <絶対検量線法> ①:標準品の濃度が段階的に異なる溶液を調製する。 ②:①で作成した溶液の一定量をカラムに注入し、得られたクロマトグラムのピーク高さやピーク面積より検量線を作成する。 ③:濃度未知の試料溶液を標準品と同一の条件で分離分析し、得られたクロマトグラムよりピーク高さやピーク面積を求める。 ④:③で求めたピーク高さ、ピーク面積の値より、検量線を用いて定量を行う。 ・絶対検量線法の欠点 試料溶液の注入量が厳密に一定でないと、定量誤差が生じることがある。 例えば、試料溶液を1µL注入するところを誤って2µL注入した場合、ピーク高さ及びピーク面積が2倍となり、定量誤差が生じる。 <内標準法> ①:被検成分にできるだけ近い保持時間で溶離し、かつ試料中の他の成分のピークとも完全に分離する安定な物質を内標準物質として選定する。 ②:標準品の濃度が段階的に異なる溶液を調製し、そこに一定量の内標準物質を添加する。 ③:②で作成した溶液の一定量をカラムに注入し、得られたクロマトグラムのピーク高さの比(標準品のピーク高さ/内標準物質のピーク高さ)やピーク面積の比(標準品のピーク面積/内標準物質のピーク面積)より検量線を作成する。 ④:一定量の内標準物質を添加した濃度未知の試料溶液を標準品と同一の条件で分離分析し、得られたクロマトグラムよりピーク高さの比やピーク面積の比を求める。 ⑤:④で求めたピークの比やピーク面積の比より、検量線を用いて定量を行う。 ・内標準法について 内標準法では、絶対検量線法と異なり、ピーク比を用いるため、試料溶液の注入量が厳密でなくても、定量が可能である。ただし、適切な内標準物質の選定が難しい場合がある。 <標準添加法> ①:試料溶液を一定量分取する。 ②:①の溶液に標準品を濃度が段階的になるように加える。 ③:②で作成した溶液の一定量をカラムに注入し、得られたクロマトグラムのピーク高さやピーク面積より検量線を作成する。 ④:得られた検量線を横軸に対して外挿し、横軸切片より試料溶液の濃度を求める。 ・定量法の選択について 液体クロマトグラフィーの定量については、通常、内標準法によるが、適当な内標準物質が得られない場合は、絶対検量線法による。また、ガスクロマトグラフィーの定量については、通例、内標準法によるが、適当な内標準物質が得られない場合は、絶対検量線法による。また、被検成分以外の成分の影響が無視できない場合は標準添加法による。 ◇関連問題◇ 第90回問28 → Read More

ガスクロマトグラフィー

ガスクロマトグラフィー 1 ガスクロマトグラフィー  ガスクロマトグラフィーとは、移動相に気体を用いるクロマトグラフィーのことである。ガスクロマトグラフィーの装置の概要を以下に示す。 ガスクロマトグラフィーでは、移動相としてキャリアーガスといわれる不活性ガス(窒素ガス、ヘリウム、アルゴンなど)が用いられており、カラムには充填カラムやキャピラリーカラムが用いられている。充填カラムは、内径1〜3mm、長さ数メートルのガラスやステンレスの細管に固定相として吸着剤粒子や不揮発性の液体を塗布した不活性担体粒子が充填されている。それに対して、キャピラリーカラムは、内径0.3mm、長さ数十メートルの毛細管に固定相として不揮発性の液体が塗布されてる。なお、固定相に不揮発性液体を用いた場合を「気−液クロマトグラフィー」といい、固定相に吸着剤や不揮発性担体を用いた場合を「気−固クロマトグラフィー」という。 <充填カラムとキャピラリーカラムの比較>  充填カラムとキャピラリーカラムでは、内径、長さ、分離能が異なる。次に充填カラムとキャピラリーカラムの違いについてまとめる。 内径:充填カラム>キャピラリーカラム 長さ:充填カラム<キャピラリーカラム 分離能:充填カラム<キャピラリーカラム ガスクロマトグラフィーを用いて物質を分離精製する場合には、試料を気体にする必要がある。そのため、ガスクロマトグラフィーにより揮発性の低い物質を分析したい場合には、分析する前に化合物を揮発性物質へ誘導体化する必要がある。ガスクロマトグラフィーのおける試料の誘導体化の方法を以下にまとめる。 ガスクロマトグラフィーでは、液体クロマトグラフィーと同様に保持時間を用いて成分の同定を行うことが可能であり、また、ピーク高さやピーク面積より各成分の定量を行うことが可能である。 ガスクロマトグラフィーを用いて、沸点の異なる成分を一度に分離しようとする場合、カラムの温度を徐々に上昇させると、分析時間を大幅に短縮することが可能となる。このような分離の方法を昇温ガスクロマトグラフィーという。 2 検出器  ガスクロマトグラフィーでは、様々な検出器が用いられる。ガスクロマトグラフィーで用いられる検出器の特徴と検出できる成分について以下にまとめる。 1)熱伝導度検出器(TCD)  熱伝導度検出器は、カラムから溶離された成分により熱伝導率が変化し、それにより電気伝導が変化することを利用した検出器であり、ほとんどすべての有機・無機化合物を検出することができる。多くの物質を検出することができる反面、検出感度は高くない。 2)水素炎イオン化検出器(FID)  水素炎イオン化検出器は、カラムからのキャリヤーガスに水素を混合し、燃焼させて水素炎を生じさせる検出器であり、炭素−水素(C−H)結合をもつ化合物の検出に用いられる。 3)電子捕獲検出器(ECD)  電子捕獲検出器は、ハロゲンなどの電気陰性度の大きい物質が電子を受け取ることを利用した検出器であり、有機ハロゲン化合物などの超微量分析に用いられる。 電子捕獲検出器では、キャリヤーガスとして用いられる窒素ガス(N2)が検出器内で発生するβ線によりN2→ Read More

液体クロマトグラフィー

液体クロマトグラフィー 1 液体クロマトグラフィー  液体クロマトグラフィーとは、移動相に液体を用いるクロマトグラフィーのことであり、医薬品の分析や生体高分子の分析に用いられている。液体クロマトグラフィーの分離モードには、「吸着」「分配」「イオン交換」「サイズ排除」「アフィニティー」などがあり広範囲な化合物の分析が可能である。液体クロマトグラフィーには、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーがあり、それぞれの概要を以下に示す。 1)カラムクロマトグラフィー シリカゲルなどの固定相を充填した開放型のガラス管に有機溶媒を流し、目的成分の分取を行う方法 2)高速液体クロマトグラフィー 密閉系において移動相をポンプで加圧して試料混合物を迅速に分離・溶離する方法 高速液体クロマトグラフィーは、送液ポンプ、試料導入部、カラム、検出器、記録計からなる。 <勾配溶離(グラジエント溶離)について>  液体クロマトグラフィーでは、物理化学的性質が異なる多様な化合物の混合資料を短時間で分析するために、勾配溶離(グラジエント溶離)が用いられることがある。 勾配溶離(グラジエント溶離)とは、時間の経過に伴って移動相として用いられる溶媒の組成を変化させることで、時間経過と共に溶離力を強めることによって保持力の強い成分の溶離時間を早め、結果的に時間を短縮することが可能となる。 2 検出法  液体クロマトグラフィーでは、検出器として「紫外吸光光度計」「可視吸光光度計」「蛍光光度計」「電気化学検出器」「質量分析計」などが用いられる。 3 誘導体化  液体クロマトグラフィーでは、検出器に対して感受性を高めるために目的成分の化学構造を変化させる誘導体化が行われることがある。 例えば、アミノ化合物やアミノ酸の誘導体化には、誘導体化試薬としてニンヒドリン、オルトフタルアルデヒド、ダンシルクロニドなどが用いられる。ニンヒドリンにより誘導体化すると、試料が吸光現象を示すようになり、オルトフタルアルデヒドやダンシルクロニドにより誘導体化すると、試料が蛍光発光現象を示すようになる。 試料の誘導体化には、プレカラム誘導体化法とポストカラム誘導体化法があり、プレカラム誘導体化法では、試料をカラムに導入する前に誘導体化を行い、ポストカラム誘導体化法では、試料をカラムに導入した後に誘導体化を行う。 ◇関連問題◇ 第104回問94 → Read More

クロマトグラフィーの分離機構

クロマトグラフィーの分離機構 1 クロマトグラフィーの原理  クロマトグラフィーとは、互いに混じり合わない固定相と移動相の間における物質の親和性の差(相互作用の差)を利用して試料混合物の分離を行う方法である。 例えば、無極性の固定相に接して移動相を流しているところに試料混合物(無極性の成分Xおよび極性の成分Y)を注入し、一定流速で移動相を流し続けた場合、無極性の成分Xは固定相に親和性を示すため、保持時間(カラムに試料が導入されてから溶出されるまでの時間)が長くなるが、極性の成分Yは固定相に親和性をほとんど示さないため、保持時間は短くなる。この保持時間の差により、成分Xと成分Yの分離が可能となる。 クロマトグラフィーでは、固定相との親和性の低いものから先に溶離する特徴を有しており、この特徴を生かして物質の分離を可能にしている。 クロマトグラフィーを行うと、その結果として、横軸に試料注入後の経過時間、縦軸に溶離してくる濃度を表したクロマトグラフが得られる。 2 クロマトグラフィーの種類  クロマトグラフィーは、移動相に用いる物質の状態によって3つに大別される。 移動相が液体:液体クロマログラフィー 移動相が気体:ガスクロマログラフィー 移動相が超臨界流体:超臨界流体クロマトグラフィー <参考:超臨界流体について> 超臨界流体とは、高温、高圧における物質の状態のことであり、液体と気体の両方の性質を有する。 3 クロマトグラフィーにおける分離機構  クロマトグラフィーの分離機構は、物質と固定相との間の相互作用の程度の差に基づいており、これを分離モードという。分離モードには、「吸着」「分配」「イオン交換」「分子ふるい」「アフィニティー」がある。 1)吸着モード  試料に含まれる成分と固定相の表面分子との可逆的な物理吸着を利用して物質を分離する方法を吸着クロマトグラフィーという。吸着クロマトグラフィーでは、一般に、極性の高い固定相と極性の低い移動相の組合がよく用いられる。 吸着クロマトグラフィーで用いられる固定相には、シリカゲル、アルミナ、ポリスチレンゲルが用いられる。 ・シリカゲルについて シリカゲルは下記の構造をしており、親水基を有するため、極性分子と相互作用を示す。 ・極性の高い固定相を用いて物質を分離した場合について 極性の高い固定相を用いた場合、極性の高い物質は固定相に吸着しやすいが、極性の低い物質は固定相に吸着しにくい。このことから、極性の高い固定相を用いた場合、極性の低い物質から先に溶離し、極性の高い物質は、後から溶離する。 2)分配モード  互いに混じり合わない2種類の溶媒に溶質を加えると、極性の高い物質は極性溶媒(水、アルコールなど)によく溶け、極性の低い物質は極性の低い溶媒(ベンゼンやn−ヘキサンなど)によく溶ける。このような分配の程度の差を利用するクロマトグラフィーを分配クロマトグラフィーという。 ・順相クロマトグラフィーと逆相クロマトグラフィーについて 分配クロマトグラフィーについては、固定相と移動相の組合せにより順相クロマトグラフィーと逆相クロマトグラフィーに分類される。 逆相クロマトグラフィーでは、固定相としてオクタデシルシリル(ODS)化シリカゲルが汎用されている。 ・オクタデシルシリル(ODS)化シリカゲル オクタデシルシリル(ODS)化シリカゲルは、シリカゲルの水酸基にアルキル鎖を付加することで極性を低下させている(脂溶性にしている)。 ・ODSを固定相に用いて物質を分離した場合について ODS(脂溶性)を固定相に用いた場合、極性の低い物質は固定相に分配しやすいが、極性の高い物質は固定相に分配しにくい。このことから、ODS(脂溶性)を固定相に用いた場合、極性の高い物質から先に溶離し、極性の低い物質は、後から溶離する。 3)イオン交換モード  イオン交換とは、ある物質に結合しているイオンが他のイオンと可逆的に交換される現象のことであり、陽イオン交換といえば、陽イオンの間における交換、陰イオン交換といえば、陰イオンの間における交換のことを表している。このイオン交換の原理を利用したのが、イオン交換クロマトグラフィーである。 イオン交換クロマトグラフィーでは、イオン交換体として合成有機高分子にイオン交換基を導入したイオン交換樹脂が用いられている。 (1)陽イオン交換クロマトグラフィーを用いたアミノ酸の分離  陽イオン交換クロマトグラフィーによるアミノ酸の分離を理解するためには、アミノ酸の性質を把握する必要がある。アミノ酸は両性化合物であり、等電点(pI)の違いにより酸性アミノ酸、中性アミノ酸、塩基性アミン酸に分類される。 アミノ酸は両性化合物であることから、pHにより帯電の度合いが異なる。 上記の反応式より、等電点では、アミノ酸は電荷が±0となり、分子のような性質を示すが、等電点より酸性側(pH<pI)では、プラスに帯電し陽イオンとなり、アルカリ性側(pI<pH)では、マイナスに帯電し陰イオンとなる。 陽イオン交換クロマトグラフィーのよるアミノ酸の分離の手順を以下に示す。 ①:pHが等電点よりも低い溶媒にアミノ酸を溶解する。この状態では、アミノ酸はすべてプラスに帯電している。 ②:アミノ酸がすべてプラスに帯電している状態のものを陽イオン交換体を含むカラムに流し込む。陽イオン交換体にプラスに帯電したアミノ酸が結合する。 ③:その後、移動相のpHを上昇させていくと、それぞれのアミノ酸の等電点とpHが等しくなる。それにより、アミノ酸の電荷が±0となり、陽イオン交換体と結合できなくなる。陽イオン交換体と結合できなくなったアミノ酸がカラムより溶離することから、アミノ酸の分離が可能となる。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いたアミノ酸の分離では、等電点の低いものから溶離する。 4)サイズ排除(分子ふるい)モード  立体的な網目構造を有する固定相を用いると、小さな分子は固定相の内部まで侵入できるため保持時間が長くなるが、大きな分子は固定相の内部まで侵入できないため、保持時間は短くなる。 このような分子サイズによる排除効果(分子ふるい効果)を利用したクロマトグラフィーをサイズ排除クロマトグラフィー(分子ふるいクロマトグラフィー)という。 5)アフィニティーモード  生体高分子の間には親和性(バイオアフィニティー)を示すもの(抗原と抗体、酵素と基質、ホルモンと受容体など)があり、それらを利用したクロマトグラフィーをアフィニティークロマトグラフィーという。 親和性を示す物質(ピンク色の物質)は、固定相に保持されるが、水色、紫色の物質は固定相には保持されない。このことを利用して、生物学的親和性を示す物質を他の物質と分離することができる。 4 分離に関するパラメーター  クロマトグラフを読み取るにあたり、多くのパラメーターについて把握しておく必要がある。 1)→ Read More

第96回薬剤師国家試験 問27(改)

第96回薬剤師国家試験 問27(改) 固定相としてオクタデシルシリル(ODS)化シリカゲル、移動相としてアセトニトリルと緩衝液(pH3)の混合溶媒を用いて、ベンゼン、トルエン及び安息香酸の分離を液体クロマトグラフィーにより行った。次の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、質量分布比をkとする。 1 トルエン、ベンゼン、安息香酸の順に溶出する。 2 移動相中のアセトニトリルの含量を増やすと、ベンゼン、トルエン及び安息香酸のkは大きくなる。 3 ベンゼン、トルエン及び安息香酸の保持には、疎水性相互作用が働いている。 4 移動相中の緩衝液のpHを3から7に変えると、安息香酸のkは小さくなる。             解答 3、4 解説 1 誤 固定相にオクタデシルシリル化シリカゲルを用いていることから、極性の高いものから先に溶出する。そのため、はじめに安息香酸が溶出し、続いてベンゼン、トルエンの順に溶出する。 2 誤 移動相中のアセトニトリルの含量を増やすと、移動相の極性が低下し、ベンゼン、トルエン及び安息香酸は移動相中に移行しやすくなるため、kの値は小さくなる。 3 正 オクタデシルシリル化シリカゲルは、疎水性相互作用により溶質を保持する。 4 正 移動相中の緩衝液のpHを3から7に変えると、安息香酸は分子形が減少し、疎水性相互作用が弱くなるため、安息香酸は移動相へ移行しやすくなる。よって、移動相中の緩衝液のpHを3から7に変えると、安息香酸のkは小さくなる。 → Read More

第93回薬剤師国家試験 問26(改)

第93回薬剤師国家試験 問26(改) 液体クロマトグラフィーに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。 1 固定相としてシリカゲルを用いる吸着クロマトグラフィーでは、塩基性の溶質が先に溶出する。 2 固定相としてオクタデシルシリル化したシリカゲルを用いる逆相分配クロマトグラフィーでは、極性の大きな溶質が先に溶出する。 3 陽イオン交換クロマトグラフィーでは、陽イオンの価数の大きな溶質が先に溶出する。 4 サイズ排除クロマトグラフィーでは、分子量の大きな溶質が先に溶出する。               解答 2、4 解説 1 誤 固定相としてシリカゲルを用いる吸着クロマトグラフィーでは、極性の小さな溶質(疎水性の大きな溶質)が先に溶出する。 2 正 オクタデシルシリル化シリカゲル(ODS)は、疎水性相互作用により極性の小さな溶出を保持しやすい。そのため、固定相としてオクタデシルシリル化したシリカゲルを用いる逆相分配クロマトグラフィーでは、極性の大きな溶質が先に溶出する。 3 誤 陽イオン交換クロマトグラフィーでは、陽イオンの価数が大きな溶質は保持されやすいため、後に溶出する。 4 正 サイズ排除クロマトグラフィーでは、分子量の小さい溶出が保持されやすいため、分子量の大きな溶質が先に溶出する。 → Read More

第90回薬剤師国家試験 問28(改)

第90回薬剤師国家試験 問28(改) 高速液体クロマトグラフ法による物質の定量に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。 1 内標準法は標準添加法ともよばれ、定量結果に対して被検成分以外の成分の影響が無視できない場合に適している。 2 内標準法を用いて定量を行う場合、作成する検量線の縦軸には被検成分のピーク面積又はピーク高さをとる。 3 内標準物質としては、被検成分に近い保持時間をもち、いずれのピークとも完全に分離する安定な物質が適している。 4 絶対検量線法を用いて定量を行う場合、注入操作などの測定操作を厳密に一定の条件に保つ必要はない。 5 ピーク面積の測定を行う場合、ピーク高さの中点におけるピーク幅にピーク高さを乗じてピーク面積を求めることができる。               解答 3、5 解説 1 誤 内標準法と標準添加法は異なる方法である。 2 誤 内標準法を用いて定量を行う場合、作成する検量線の縦軸には、内標準物質のピーク面積又はピーク高さに対する標準被験成分のピーク面積又はピーク高さの比をとる。 3 正 4 誤 絶対検量線法を用いて定量を行う場合、注入操作などの測定操作を厳密に一定の条件に保つ必要がある。 5 正 → Read More