薬剤師が特別養護老人ホームを訪問した時、施設の看護師から入所者が内服薬を服用しないので困っているとの相談を受けた。処方は朝食後にドネペジル塩酸塩錠10mgを1錠であった。現状を踏まえ、主治医に対し次回からリバスチグミン経皮吸収型製剤への変更を提案した。
問264(実務)
薬剤変更を提案するにあたって、薬剤師が主治医に確認することとして、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 患者が錠剤を飲まない時に貼付し、両剤を併用すること
- 患者が軽・中程度のアルツハイマー型認知症であること
- 患者が過去に貼付剤によってかぶれたことがあるか
- 薬剤変更後、毎週の増量が必要なこと
- 患者に腎機能障害がないこと
解答・解説
解答
2、3
解説
1 誤
本剤(リバスチグミン経皮吸収型製剤)とドネペジル塩酸塩錠は共にコリンエステラーゼ阻害薬であり、両剤を併用するとコリン刺激性が強く現れ、副作用(悪心・嘔吐、徐脈など)を引き起こすことがあるため併用しない。
2 正
本剤は、軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制に用いられるため、患者が軽・中等度のアルツハイマー型認知症であることを確認する必要がある。
3 正
本剤の副作用として、皮膚症状が現れることがあるため、患者が過去に貼付剤によってかぶれたことがあるか確認する必要がある。
4 誤
本剤の用法及び用量は「通常、成人にはリバスチグミンとして1日1回4.5mgから開始し、原則として4週毎に4.5mgずつ増量し、維持量として1日1回 18mgを貼付する」とされている。
5 誤
本剤は、主にエステラーゼにより加水分解され、その後、硫酸抱合を受けることから、主に代謝により消失する。そのため、患者に腎機能障害がないことを確認する必要性が低い。
問265(薬剤)
リバスチグミン経皮吸収型製剤の特徴として、誤っているのはどれか。1つ選べ。
- 背部又は胸部に貼付したとき、リバスチグミンの吸収には貼付部位間で差が認められない。
- 繰り返し貼付することで血漿中濃度は定常状態に達する。
- 肝初回通過効果を受けない。
- 主たる吸収経路は、皮膚における汗腺や毛穴などの付属器官である。
- 急激な血漿中濃度の上昇が回避される。
解答・解説
解答
4
解説
1 正しい
背部、上腕部、胸部に貼付した時、リバスチグミンの暴露量には貼付部位間で差が認められていない。
2 正しい
繰り返し投与することで血中濃度が徐々に上昇し、投与開始3日で定常状態に到達する。
3 正しい
経皮吸収型製剤では、主薬が肝臓を介することなく循環血液に到達するため、肝初回通過効果を受けない。
4 誤っている
経皮吸収型製剤の主たる吸収経路は、角質層を介した経路である。なお、汗腺、毛穴は面積が小さく、吸収の寄与は少なく、主たる吸収経路とはならない。
5 正しい
経皮吸収型製剤は、皮膚を介して薬剤が徐々に吸収されるため、急激な血漿中濃度の上昇を回避することができる。
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