52歳女性。約1年前に乳癌(ホルモン受容体陰性、HER2陰性)と診断され、術後化学療法としてAC(ドキソルビシン+シクロホスファミド)療法を受けたが、最近、再発が認められた。そこで二次治療として、アブラキサン®点滴静注用(注)による化学療法を実施することになった。[注:パクリタキセル注射剤(アルブミン懸濁型)]
問276(薬剤)
アブラキサン®点滴静注用の製剤学的特徴に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 懸濁化剤として、メチルセルロースが添加されている。
- パクリタキセルを人血清アルブミンに結合させてナノ粒子化した製剤である。
- 保存剤が含まれるため、懸濁液は冷所で約1週間保存できる。
- 点滴静注後、血液中で微粒子は崩壊することなく安定に存在し、パクリタキセルが腫瘍に効率よく集積する。
- 用時懸濁して用いる凍結乾燥注射剤である。
解答・解説
解答
2、5
解説
1 誤
本剤には、メチルセルロースは添加されていない。なお、アブラキサン®点滴静注用には、添加物として人血清アルブミンのみ含まれている。
2 正
本剤は、パクリタキセルを人血清アルブミンに結合させてナノ粒子化した製剤である。
3 誤
本剤には、保存剤が含まれていないため、懸濁液は調製後速やかに使用するか、又は箱に戻し、冷蔵庫(2〜8℃)に遮光保存して8時間以内に使用することとされている。
4 誤
本剤に含まれるパクリタキセル粒子は、血液中で早期に崩壊し、組織に移行する。
5 正
本剤は、水に極めて難溶性のパクリタキセルを人血清アルブミンに結合させ、従来のパクリタキセル製剤の溶媒(ポリオキシエチレンヒマシ油、無水エタノール)を使用せず、生理食塩液で懸濁し投与することを可能にした凍結乾燥製剤である。
問277(実務)
本治療に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
- Dose Limiting Toxicityとして骨髄抑制があり、好中球数及び血小板数の変動に十分留意する。
- アルコール過敏症の患者には禁忌であり、事前に患者から聞き取りを行う必要がある。
- 末梢神経障害でしびれなどが現れたときには、減量や休薬が必要とされる。
- パクリタキセルの他の製剤(ポリオキシエチレンヒマシ油含有製剤)に比べ過敏症が発現しにくいので、末梢より5分間かけて静注する。
- 沈殿物が認められることがあるので、投与時にはインラインフィルターを使用する。
解答・解説
解答
1、3
解説
1 正
本剤は、Dose Limiting Toxicity(用量制限毒性)として骨髄抑制があり、好中球数及び血小板数の変動に十分留意する。
2 誤
本剤は、添加剤としてアルコールを含んでいないため、アルコール過敏症の患者にも投与することが可能である。
3 正
本剤の副作用として、末梢神経障害が現れることがあるため、しびれなどの症状が現れた場合には、減量や休薬が必要となる。
4 誤
本剤は、他の製剤(ポリオキシエチレンヒマシ油含有製剤)に比べ過敏症が発現しにくいため、ステロイド剤や抗ヒスタミン剤の前投与が必須ではない。なお、点滴静注時間は30分とされている。
5 誤
本剤を投与する際には、アルブミンがフィルターに吸着し、目詰まりを起こすことがあるため、インラインフィルターは使用しない。
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