60歳代の男性が薬剤師会が主催する健康相談会にやってきた。相談内容は以下のとおりである。 「昔一緒に働いていた友人が悪性中皮腫っていうがんになった。アスベスト(石綿)が原因だと聞いた。最近、自分も同じような症状がでてきて心配だ。」
問 322(実務)
アスベスト(石綿)による健康被害を疑った薬剤師の対応として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 潜伏期間が比較的短いため、友人と働いていた時期がいつなのかを確認した。
- 友人と働いていた場所が、工事現場などの曝露のおそれがある場所なのか確認した。
- 呼吸困難、咳、胸痛などの自覚症状があるか確認した。
- 飛沫感染によって他人にうつすおそれがあることを説明した。
- 吸い込んだアスベスト(石綿)による一過性の炎症反応のため、心配いらないと説明した。
解答・解説
解答
2、3
解説
1 誤
アスベストによる健康被害の潜伏期間は、非常に長い(15〜40年間)。
2 正
アスベストに曝露する可能性が高い場所として、アスベストを含む建築物を解体する工事現場などがある。アスベストによる健康被害かどうかを確認する上で、昔、働いていた場所がアスベストに暴露する可能性がある場所なのかを確認する必要がある。
3 正
アスベストによる健康被害の自覚症状として、呼吸困難、咳、胸痛などが現れる。
4 誤
アスベストによる健康被害は、感染症によるものではないため、飛沫感染しない。
5 誤
アスベストによる中皮腫の可能性があるため、医療機関を受診するように勧める必要がある。
問 323(法規・制度・倫理)
この男性に医療機関への受診勧奨を行ったところ、「今でも年金でぎりぎりの生活をしているのに治療費まで出せないよ」と言われ、薬剤師は、「アスベストが原因での病気の治療は、公費負担医療制度の対象になる可能性がある」と説明した。公費負担医療制度の内容として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 税金を基礎として医療費給付を行う。
- 高額な医療が必要と判断された場合に利用する。
- 国や地方自治体が運用する。
- 社会保険方式による制度である。
- 保険薬局であれば、どこでも取り扱うことができる。
解答・解説
解答
1、3
解説
1 正
公費負担医療制度は、公的責任において医療を実施し、税金を基礎として医療費給付を行う。
2 誤
高額な医療が必要と判断される場合に利用される制度は、高額療養費制度である。
3 正
公費負担医療制度は、国や地方自治体が運用する制度である。
4 誤
公費負担医療制度は、社会保険方式(加入者からの保険料を主な財源として行われる方式)による制度ではない。
5 誤
保険薬局で公費負担医療制度による調剤を行うためには、各法(戦傷病者特別援護法、原子爆弾被害者救護法、感染症法、生活保護法、石綿健康被害救済法、児童福祉法、母子保健法、障害者自立支援法)に基づく指定を受けなければならない。