金属結合タンパク質であるメタロチオネインは、肝臓、腎臓、小腸などの細胞の細胞質に存在する。
構成アミノ酸61個のうち約3分の1(20個)が遊離システインであり、遊離SH基を介して金属イオンと結合する低分子量タンパク質(分子量約6,000~7,000)である。熱や酸にも強く、生理学的条件下では、そのほとんどが亜鉛と銅に結合し、それらの貯蔵と輸送に関与する。
主な特徴と役割
- 金属イオンの恒常性維持
- メタロチオネインは、亜鉛や銅などの必須金属イオンを結合・貯蔵し、必要に応じて供給することで細胞内の金属バランスを調節する。
- 有害金属の解毒
- カドミウムや鉛などの重金属と結合し、細胞内での毒性を軽減する。
- 酸化ストレスの防御
- システイン残基の強い還元力により、活性酸素種(ROS)を中和し、細胞を酸化ストレスから保護する。
- 遺伝子発現の調節
- メタロチオネインは亜鉛イオンを介して、亜鉛指タンパク質や転写因子の活性化に関与し、遺伝子発現を調整する。
構造
- メタロチオネインの分子構造は、システイン残基のチオール基 (-SH) と金属イオンの結合によって特徴づけられる。
- この結合により、特異的な三次元構造が形成され、金属イオンを安定的に保持する。
発現と調節
- 誘導因子
メタロチオネインの発現は、以下の要因によって誘導される:- 重金属(カドミウム、鉛など)
- 酸化ストレス
- 炎症性サイトカイン
- グルココルチコイドホルモン
- 組織分布
肝臓、腎臓、小腸など、重金属の代謝や解毒が活発な組織で高い発現が認められる。
応用と研究
- 医学的応用
メタロチオネインは、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病)やがん治療の研究において注目されている。特に酸化ストレスの制御や金属イオン代謝異常との関連が研究されている。 - 環境科学
重金属汚染の指標として、生物内のメタロチオネイン量を測定する研究も進んでいる。
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