◉名称、化学構造
一般名:エンパグリフロジン
商品名:ジャディアンス
◉分類
選択的SGLT2阻害剤
2型糖尿病・慢性不全治療薬
◉効能・効果
- 2型糖尿病
- 慢性心不全
ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る
◉薬理作用
- 腎臓で濾過されたグルコースは近位尿細管に存在するナトリウム-グルコース共役輸送担体2(SGLT2)によってほぼ完全に再吸収され、わずかではあるがSGLT1によっても再吸収される。エンパグリフロジンはSGLT2選択的な競合阻害剤で、腎臓によるグルコースの再吸収を阻害することにより尿中グルコース排泄量を増加させ、血糖を低下させる。
- エンパグリフロジンは腎臓の近位尿細管におけるSGLT2を介して、グルコースだけではなくナトリウム再吸収も抑制するため、遠位尿細管へのナトリウム送達が増加する。その結果として、尿細管糸球体フィードバックの増加、心臓の前負荷及び後負荷の減少、並びに交感神経活性の低下など生理的機能に変化を及ぼす可能性がある。
また、エンパグリフロジンの内皮機能に対する直接的作用、心臓の代替エネルギー源としてのケトン体供給による代謝への作用及び酸化ストレス、炎症の抑制も慢性心不全に対する作用に寄与している可能性がある。
◉使用する際の注意
【効果共通】
- 本剤の使用にあたっては、患者に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明する。
- 本剤投与により、血清クレアチニンの上昇又はeGFRの低下がみられることがあるので、腎機能を定期的に検査する。
- 尿路感染及び性器感染を起こし、腎盂腎炎、外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎、敗血症等の重篤な感染症に至ることがある。
十分な観察を行うなど尿路感染及び性器感染の発症に注意し、発症した場合には適切な処置を行うとともに、状態に応じて休薬等を考慮する。 - 本剤の利尿作用により多尿・頻尿がみられることがある。また、体液量が減少することがあるので、適度な水分補給を行うよう指導し、観察を十分行う。
脱水、血圧低下等の異常が認められた場合は、休薬や補液等の適切な処置を行う。特に体液量減少を起こしやすい患者(高齢者、腎機能障害患者、利尿薬併用患者等)においては、脱水や糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、脳梗塞を含む血栓・塞栓症等の発現に注意する。 - 本剤の作用機序である尿中グルコース排泄促進作用により、血糖コントロールが良好であっても脂肪酸代謝が亢進し、ケトーシスがあらわれ、ケトアシドーシスに至ることがある。
- 排尿困難、無尿、乏尿あるいは尿閉の症状を呈する患者においては、その治療を優先するとともに他剤での治療を考慮する。
- 本剤投与による体重減少が報告されているため、過度の体重減少に注意する。
- 低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転等に従事している患者に投与するときは注意する。
【2型糖尿病】
- 本剤投与中は、血糖を定期的に検査し、薬剤の効果を確かめ、本剤を3カ月投与しても効果が不十分な場合には他の治療法への変更を考慮する。
- 腎機能障害患者においては経過を十分に観察し、継続的にeGFRが45mL/min/1.73m2未満に低下した場合は投与の中止を検討する。
◉相互作用
◉薬物動態学的相互作用の要因
- リチウム製剤の排泄促進作用により、血中リチウム濃度が低下する。
◉薬力学的相互作用の要因
- 糖尿病治療薬(インスリン製剤、SU剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、DPP-4阻害剤、GLP-1製剤等)の作用が増強し、低血糖を起こす。
- 血糖降下作用を増強する薬(β受容体遮断薬、サリチル酸製剤等)により本剤の作用が増強する。
- 血糖降下作用を減弱する薬(アドレナリン、甲状腺ホルモン製剤、糖質コルチコイド製剤)により本剤の作用が減弱する。
- 利尿剤(ループ利尿薬、チアジド系利尿薬など)の利尿作用が増強する。
◉副作用
◉主な副作用
尿路感染、膀胱炎、外陰部腟カンジダ症、亀頭包皮炎、陰部のかゆみ、亀頭炎、めまい、便秘、かゆみ、頻尿、多尿、排尿困難、尿量増加、口渇、空腹感、体重減少など
◉重大な副作用[初期症状]
低血糖
[脱力感、空腹感、冷汗]脱水
[口渇、多尿・頻尿、血圧低下]ケトアシドーシス
[吐き気・嘔吐、食欲減退、腹痛]腎盂腎炎、外陰部および会陰部の壊死性筋膜炎、敗血症
[寒気、発熱、脇腹・背部の痛み]
コメント