45歳女性。身長148 cm、体重52 kg。体表面積は1.44 m2、クレアチニンクリアランスは40 mL/minであった。StageⅡの卵巣がんに対する化学療法として次の治療を受けることになった。

問222 (実務)
この処方を受けとった薬剤師が確認する内容として、適切でないのはどれか。1つ選べ。
- カルボプラチンの総投与回数。
- カルボプラチンを混和する液が注射用水であること。
- 腎機能が低下しているため、カルボプラチンの減量を考慮すること。
- パクリタキセルの点滴ルートに、DEHP(可塑剤の1種)が含まれないこと。
- パクリタキセルの投与を、0.22 µm以下のメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを通して行うこと。
解答・解説
解答
2
解説
1 適切
カルボプラチンは多くのがん治療に用いられ、治療するがんの種類によって投与回数、休薬期間などが異なるため、カルボプラチンを投与する際は、総投与回数を確認する必要がある。
2 不適切
カルボプラチン注射液は使用するにあたり、ブドウ糖又は生理食塩水に溶解する必要があるため、混和する液に注射用水を用いることは不適切である。
3 適切
カルボプラチンは腎消失型薬物であるため、本患者のように腎機能が低下している場合にはカルボプラチン減量を考慮する必要がある。
4 適切
パクリタキセルの溶解液はDEHP(フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル))を溶出させるため、パクリタキセルの溶解液が接触する部分に可塑剤としてDEHPを含有しているものの使用を避ける必要がある。
5 適切
パクリタキセルの希釈液は、過飽和状態にあるためパクリタキセルが結晶として析出する可能性があるので、本剤投与時には、0.22ミクロン以下のメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを通して投与する。
問223 (物理・化学・生物)
パクリタキセルとカルボプラチンは、細胞の増殖に影響を与える薬物である。細胞増殖に関連する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- がん原遺伝子は、正常な細胞増殖には関与しない。
- DNAの損傷は、DNA複製前に細胞周期のG2/Mチェックポイントにおいてチェックされる。
- パクリタキセルは、微小管の脱重合を阻害して細胞分裂を抑制する。
- カルボプラチンは、DNAの構成塩基に結合してDNA複製を阻害する。
解答・解説
解答
3、4
解説
1 誤
がん原遺伝子とは、変異することによりがん遺伝子へと変化する遺伝子のことであり、変異するまでは正常細胞の増殖遺伝子として働く。
2 誤
細胞周期では「→G1期→S期→G2期→M期→G1期→…」を繰り返す。
G1期:DNA合成準備期、S期:DNA合成期(複製)、G2期:分裂準備期、M期:分裂期
DNAの損傷は、DNA複製前に細胞周期のG1/Sチェックポイントにおいてチェックされる。
3 正
パクリタキセルは、チュブリンに結合し微小管タンパク質の重合を促進することにより微小管の脱重合を阻害する。
4 正
カルボプラチンは、がん細胞のDNAと結合することによりDNAの複製や細胞分裂を阻害する。