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第109回薬剤師国家試験 問120〜122 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染/薬害エイズ

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染と薬害エイズに関する以下の問いに答えよ。

問120(物理・化学・生物)
血友病の治療のために投与された非加熱血液製剤によりHIV感染が生じた事例に関連する生物学的知識として、正しいのはどれか。2選べ。

  1. 遺伝性血友病はX連鎖潜性(劣性)遺伝により生じるため、男性に発症しやすい。
  2. 血漿中のHIVは加熱処理しなくても、孔径0.22μmのメンブレンろ過により除去できる。
  3. 血液製剤に混入したHIVは、治療を受ける患者のCD8陽性Tリンパ球に感染する。
  4. HIVはレトロウイルスであり、プロウイルス化により感染宿主細胞内で長期間潜伏できる。
  5. HIV感染による症状として、花びらのように分かれた核を持つ特徴的な腫瘍化T細胞がみられるようになる。
解答・解説

解答
1、4

解説
1 正
遺伝性血友病は、先天性X染色体長腕上のⅧ因子、Ⅸ因子の遺伝子の変異による劣性遺伝により生じるため、男性に発症しやすい。

2 誤
 HIVは、非常に小さいウイルスであり、孔径0.22μmのメンブランろ過により除去することはできない。

3 誤
血液製剤に混入したHIVは、治療を受ける患者のCD4陽性Tリンパ球(ヘルパーT細胞)に感染する。

4 正
HIVはレトロウイルスであり、自身が有する逆転写酵素によりRNAよりDNAを合成し、その後、インテグラーゼにより宿主細胞のDNAに入り込みプロウイルス化することにより感染宿主細胞内で長期間潜伏できる。

5 誤
設問の記述は、成人T細胞白血病リンパ腫に関する記述である。

問121(衛生)
1は、国内のHIV感染者及びAIDS患者の年間新規報告数の推移を示したものであり、図2は、2021年における国内のHIV感染者の新規報告の感染経路別内訳である。HIV感染者の発生動向に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 1のAはHIV感染者で、BはAIDS患者を表している。
  2. 2021年におけるHIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数に占めるAIDS患者の割合は、約80%と高い水準である。
  3. HIV感染者年間新規報告数は、男性よりも女性の方が多い。
  4. 図2の経路アは、母子感染によるものである。
  5. 図2の経路イは、同性間の性的接触によるものである。
解答・解説

解答
15

解説
1 正
1のAはHIV感染者で、BはAIDS患者を表している。HIV感染者年間新規報告数は、近年減少傾向となっており、2020年は前年から153件と大きく減少し、2021年は前年から8件減少し742件となった。AIDS患者年間新規報告数は、2020年に4年ぶりに前年より増加したが、2021年は315件であり、再び減少した。

2 誤
 2021年におけるHIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数に占めるAIDS患者の割合は、29.8%である。

3 誤
HIV感染者年間新規報告数は、女性よりも男性の方が多い。

4 誤
図2の経路アは、異性間の性的接触によるものである。また、図2の経路イは、同性間の性的接触によるものである。

5 正
解説4参照。

問122(法規・制度・倫理)
血液製剤による感染被害の救済制度に関する記述として、正しいのはどれか。2選べ。 

  1. 適正な使用目的に従い適正に使用された場合の感染被害の救済を目的としている。
  2. 給付金は、原因となった血液製剤の製造販売業者が全額負担する。
  3. 医療費給付の対象は、入院を要する程度以上の感染被害である。
  4. 葬祭料や遺族年金に関する給付項目は含まれていない。
  5. 製造販売業者の過失が裁判によって証明された場合に救済の対象となる。
解答・解説

解答
1、3

解説
血液製剤による感染被害を救済する制度として、生物由来製品感染症等被害救済制度がある。

1 正
生物由来製品感染症被害救済制度は、生物由来製品を適正に使用したにもかかわらず発生した感染等により、入院治療が必要な程度の感染症を起こした方の迅速な救済を図ることを目的とした制度である。

2 誤
給付に必要な費用は、一般拠出金と付加拠出金により賄われている。一般拠出金は、すべての許可生物由来製造業者等が納付する拠出金であり、付加拠出金は、前年度に救済給付の原因となった許可生物由来製品等の製造業者等が一般拠出金に加え納付する拠出金である。

3 正
解説1参照

4 誤
給付項目には、医療費、医療手当、障害年金、障害児養育年金、遺族年金、遺族一時金、葬祭料が含まれる。

5 誤
生物由来製品の製造業者、販売業者等、損害賠償の責任を有する存在が明らかな場合、生物由来製品感染症等被害救済制度の対象外となる。製造販売業者の過失が裁判によって証明された場合、過失を犯した製造販売業者が感染症被害を救済する。

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