72歳男性。身長167cm、体重75kg。独居。喫煙40本/日、飲酒ビール1L/日。15年前に血圧が高いことを指摘され、2年間薬物療法を行ったが、自己中断した。6ヶ月前に心筋梗塞を発症し、1ヶ月の入院加療を行った。高血圧症、脂質異常症、心筋梗塞のため以下の処方による治療とともに、食事療法、運動療法、禁煙の指導を受けている。なお、今回の来院時の検査値は以下のとおりであった。

(検査値) 血圧136/86mmHg、K 4.5mEq/L、血清アルブミン4.6g/dL、AST 28IU/L、ALT 38IU/L、γ-GTP 78IU/L、血清クレアチニン 0.9mg/dL、BUN 15mg/dL、総コレステロール198mg/dL、LDL-C 119mg/dL、HDL-C 55mg/dL、TG(トリグリセリド)120mg/dL
問294(病態・薬物治療)
この患者の治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 心不全の発症や進展を抑制する目的で、エナラプリルが処方されている。
- 心筋梗塞後の心室性不整脈を抑制する目的で、アムロジピンが処方されている。
- 心筋梗塞後の胸痛を緩和する目的で、アスピリンが処方されている。
- 薬剤性消化性潰瘍を防止する目的で、ラベプラゾールが処方されている。
- HDL-Cを低下させる目的で、アトルバスタチンが処方されている。
解答・解説
解答
1、4
解説
1 正
本患者は、高血圧症、脂質異常症、心筋梗塞があり薬物療法中であることから、今後、心不全を起こす可能性がある。慢性心不全の初期治療には、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系を抑制するACE阻害薬(エナラプリル等)が用いられる。
2 誤
アムロジピンは、血管選択性の高いカルシウム拮抗薬であり、高血圧症、狭心症に用いられるが、心筋梗塞後の心室性不整脈を抑制する目的で用いられることはない。なお、心筋梗塞後の心室性不整脈を抑制する目的でリドカインが用いられることがある。
3 誤
アスピリンは、抗血小板薬であり、狭心症、心筋梗塞、虚血性脳血管障害における血栓・塞栓形成の抑制に用いられるが、心筋梗塞後の胸痛を緩和する目的で用いられることはない。なお、心筋梗塞後の胸痛を緩和する目的で、モルヒネ塩酸塩が用いられる。
4 正
本患者は、血栓・塞栓形成の抑制を目的にアスピリンが処方されていることから、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍を防止する目的でラベプラゾールが処方されている。
5 誤
アトルバスタチンは、HMG-CoA還元酵素阻害薬であり、LDL-Cを低下させる目的で用いられるが、HDL-Cを低下させる目的で用いられることはない。
問295(実務)
この患者に対して薬剤師が行う指導として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 禁煙補助剤を利用する。
- タンパク質制限食品を利用する。
- 1日30分程度の無酸素運動をする。
- 現在の体重を維持する。
- 飲酒量を減らす。
解答・解説
解答
1、5
解説
1 正
本患者は現在40本/日喫煙しており、禁煙指導を受けている状況にある。また、高血圧症、脂質異常症、心筋梗塞の薬物療法を行なっていることから、心血管系に影響を及ぼすことを考慮して禁煙補助剤を利用することは有用である。
2 誤
腎機能障害や肝機能障害では、タンパク質制限が必要であるが、本患者は腎機能、肝機能ともに問題ないため、タンパク質制限食品を利用する必要はない。
3 誤
生活習慣病(高血圧症、脂質異常症など)、肥満の治療、予防には、適度な有酸素運動が有用である。
4 誤
本患者のBMIは(75kg÷(1.67m)2)≒26.9(BMI25以上を肥満とする)であり、肥満状態にあることから体重を減らすことが有用である。
5 正
適度な飲酒量は、1日平均純アルコール量として約20g程度とされており、本患者は現在1L/日飲酒していることから飲酒量を減らす必要がある。