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第107回薬剤師国家試験 問329(実践問題) FOLEIRINOX療法

45歳女性。人間ドッグで膵がんの疑いを指摘され、大学病院を受診し、検査の結果、膵がん(遠隔転移あり)と診断された。1次化学療法としてFOLFIRINOX療法による治療を開始するにあたり、遺伝子多型を検査したところ、UGT1A1*6ヘテロ接合体であった。初回投与(1コース目)は以下の投与量で実施した。その後、下痢(1日2回程度)が見られたが、止瀉薬を内服することで対応可能であった。しかし、血液検査の結果、2コース目の化学療法は1週間延期された。
(入院時の検査値等)
脳症II度、腹水 2L、総ビリルビン 2.5mg/dL、血清アルブミン 3.0g/dL、PT–INR2.0、AST 85IU/L、ALT 80IU/L、γ–GTP 21IU/L、アンモニア420ng/dL、血清クレアチニン値0.7mg/dL、eGFR 71.0mL/min/1.73m2、Na 142mEq/L、K 4.8mEq/L

(1コース目投与量)
FOLFIRINOX
オキサリプラチン点滴静注(85mg/m2
イリノテカン塩酸塩水和物点滴静注(180mg/m2
フルオロウラシル急速静注(400mg/m2
フルオロウラシル持続静注(2,400mg/m2
レボホリナートカルシウム水和物点滴静注(200mg/m2

(2コース目投与予定日の血液検査値)
 総ビリルビン1.1mg/dL、AST 24IU/L、ALT 22IU/L、BUN 22.9mg/dL、
 血清クレアチニン値0.9mg/dL、赤血球数270×104/µL、白血球数1,690/µL、好中球数820/µL、 Hb12.2g/dL、血小板数21.4×104/µL

(2コース目投与予定日から1週間延期した日の血液検査値)
 総ビリルビン0.8mg/dL、AST 27IU/L、ALT 23IU/L、BUN 18.5mg/dL、
 血清クレアチニン値 0.5mg/dL、赤血球数355×104/µL、白血球数4,230/µL、好中球数1,910/µL、
 Hb13.6g/dL、血小板数28.6×10/µL

 2コース目投与予定日から1週間延期した日の血液検査結果をもとに、カンファレンスを実施した。薬剤師が医師に提案する内容として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. イリノテカン塩酸塩水和物を減量して投与する。
  2. レボホリナートカルシウム水和物を減量して投与する。
  3. 化学療法当日に人血小板濃厚液を投与し、イリノテカン塩酸塩水和物は初回と同量で投与する。
  4. 化学療法当日にG–CSF製剤を投与し、イリノテカン塩酸塩水和物は初回と同量で投与する。
  5. 今回も化学療法は延期する。

解答・解説

解答

解説
FOLFIRINOX療法では、2コース目以降の投与条件(好中球数、血小板数)を満たさなかった場合、好中球数が1,500/µL以上、血小板数が75,000/µL以上へ回復するまでは投与を延期するとともに、投与再開時には「減量基準」、「減量時の投与量」を参考に、投与再開時に減量することとされている。

本症例では、2コース目投与予定日の血液検査値の好中球数が820/µLとなっているため、投与を延期する必要がある。また、2コース目投与予定日から1週間延期した日の血液検査値の好中球数1,910/µLとなっているため、投与再開することが可能となる。
副作用として、好中球減少が認められた(下記の①〜④)場合には、イリノテカンを優先的に減量する(ただし、イリノテカン塩酸塩水和物の投与レベルがオキサリプラチンより低い場合は、イリノテカン塩酸塩水和物と同じレベルになるまでオキサリプラチンを減量する)こととされている。

① 2コース目以降の投与可能条件をみたさず投与を延期
② 500/µL未満が7日以上持続
③ 感染症又は下痢を併発し、かつ1000/µL未満
④ 発熱性好中球減少症

上記のことより、本症例ではイリノテカン塩酸塩水和物を減量して投与することが適切である。

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