75歳女性。153cm、48kg。心疾患の治療中に骨密度の低下を認め、以下の処方薬を継続して服用している。家の中で転倒後、腰痛が持続するため、かかりつけ医を受診し、整形外科病院に紹介入院となった。MRI検査の結果、腰椎圧迫骨折と診断され、1ヶ月間の入院加療と安静が指示された。患者は60歳頃から趣味で編み物をしている。喫煙歴はなく、時折、グラスに2〜3杯のワインを飲むことを楽しみにしている。
問300(病態・薬物治療)
この患者の病態と治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- ジゴキシンの副作用による続発性の骨粗しょう症と推測される。
- 骨吸収マーカーにより骨折のリスクが予測できる。
- 長期入院による認知症の発症予防が必要である。
- エルデカルシトールはアレンドロン酸ナトリウムの副作用防止のために処方されている。
- アレンドロン酸ナトリウムは骨吸収を抑制して骨密度を高め、骨折リスクを低下させる。
解答・解説
解答
3、5
解説
1 誤
ジゴキシンの副作用として、続発性の骨粗しょう症を起こすとの報告はない。
2 誤
骨吸収マーカーには、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRACP–5b)、血清・尿中NTX(Ⅰ型コラーゲンN末端架橋テロペプチド)、尿中DPD(デオキシピリジノリン)、尿中CTX(Ⅰ型コラーゲンC末端架橋テロペプチド)があり、骨折のリスクを予測する際に有用であるが、この問題には骨吸収マーカーの記載がないため、骨吸収マーカーより骨折のリスクを予測することはできない。
3 正
長期入院により認知症を誘発する可能性があるため、認知症の発症予防が必要である。
4 誤
エルデカルシトールは骨粗しょう症の治療のために処方されている。
5 正
アレンドロン酸は、ヒドロキシアパタイトに高親和性を示し、破骨細胞に取り込まれてメバロン酸代謝経路に関与するファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害することにより破骨細胞のアポトーシスを誘導することで、骨吸収を抑制する。
問301(実務)
患者の退院時に薬剤師が行う指導として適切なのはどれか。2つ選べ。
- アレンドロン酸ナトリウム錠を服用後、30分間は飲食を控えることを伝える。
- さらなる骨折は QOLを低下させるため、退院後は軽度な運動も控えることを伝える。
- カルシウム製剤が処方されているので、乳製品は控えることを伝える。
- アルコール飲料の過度の摂取は骨粗しょう症のリスク因子であることを伝える。
- アレンドロン酸ナトリウム錠は水なしで服用することを伝える。
解答・解説
解答
1、4
解説
1 正
アレンドロン酸ナトリウム錠は、2価以上の金属カチオン(カルシウム、マグネシウム等)とキレートを形成し、吸収低下を起こす。よって、服用後30分間は水以外の飲食を避ける必要がある。
2 誤
骨粗しょう症を治療するために運動療法を行う。
骨粗しょう症の運動療法
・脊椎椎体に負担を加えない伸展運動を中心とした体操を行う
・背筋群の過剰緊張状態を改善し、脊柱全体の可動性を高めるとともに筋力の増強させる
3 誤
乳製品の摂取を控える必要はないが、ビタミンD製剤、カルシウム製剤が処方されているため、高カルシウム血症を起こさないように乳製品を過度に摂取しないように伝える必要がある。
4 正
アルコールの過剰摂取は、腸管からのカルシウムの吸収を抑制し、尿中へのカルシウムの排泄を促進することで、骨粗しょう症を誘発する要因となる。
5 誤
アレンドロン酸ナトリウム錠は胃腸障害を起こしやすいため、コップ一杯(約180 mL)程度の十分な量の水で服用する必要がある。
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