FADH₂(フラビンアデニンジヌクレオチド還元型)は、生体内でエネルギー代謝に関与する重要な補酵素である。これはFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)が電子を受け取ることによって還元された形であり、多くの酸化還元反応で役割を果たす。
1. FADH₂の構造
FADH₂は、以下の成分から構成される補酵素FADの還元型である:
FADは電子を受け取り、FADH₂へ還元されることで、エネルギー代謝において役割を果たす。
2. FADH₂の生成と役割
2.1 生成
FADH₂は、以下の代謝経路で生成される:
- クエン酸回路(TCA回路)
- サクシン酸(コハク酸)がフマル酸に酸化される反応(コハク酸デヒドロゲナーゼの働き)でFADが還元され、FADH₂が生成される。
- 脂肪酸のβ酸化
- 脂肪酸分解の過程でFADH₂が生成される。
2.2 役割
- FADH₂は、電子伝達系において電子供与体として機能する。
- 電子伝達系の複合体II(コハク酸デヒドロゲナーゼ)に電子を渡し、最終的に酸素へ伝達される過程でATPを生成する。
3. FADH₂とエネルギー代謝
- FADH₂はNADHと同様にエネルギー源として利用されるが、1分子のFADH₂から生成されるATPは約1.5分子であり、NADH(約2.5分子)より少ない。
- これは、FADH₂が電子伝達系において複合体IIから関与し、NADHよりも低いエネルギーポテンシャルで電子を供給するためである。
4. FADH₂の生理的意義
- エネルギー産生
- FADH₂はクエン酸回路や脂肪酸分解によって生成され、生体エネルギーの主要な供給源であるATPの生成に寄与する。
- 酸化還元反応の調節
- FADH₂は酸化還元反応に関与し、細胞の代謝プロセス全体を調整する。
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