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第103回薬剤師国家試験 問222〜225(実践問題) 日焼け

50歳男性。薬局に処方箋とお薬手帳を持参した。初回面談の際、屋外でのスポーツやレジャーに使用する焼け止めの相談があった。この男性は、今まで日焼け止めを使用したことがなく、海水浴の後は肌が赤くなり、ほてりや痛みを感じ、水痘ができるとのことであった。

問222 (実務)
紫外線が皮膚に及ぼす影響を考慮し、薬剤師がこの男性に説明する内容として、適切でないのはどれか。1つ選べ。なお、薬局では下記の商品①〜④を取りそろえている。SPF(Sun Protection Factor)及びPA(Protection Grade of UVA)は 紫外線防止の指標であり、その効果を数字及び記号(+)で表している。

  1. 海水浴後に肌が赤くなる原因は、主に紫外線A波(UVA)によるものです。
  2. PAは、UVA防止効果の指標です。
  3. SPFの数字が大きいものは、小さいものに比べて高い紫外線B波(UVB)防止効果が期待されます。
  4. 焼けを防止する成分には、大きく分けて紫外線を吸収するものと紫外線を散乱させるものがあります。
  5. 炎天下で長時間スポーツをする際には、①よりも④をお勧めします。

解答・解説

解答
1

解説
1 適切でない
 海水浴後に皮膚が赤くなる原因は、主に紫外線B波(UVB)によるものである。UVBで刺激された表皮細胞では炎症性メディエーターが産生され、皮膚の紅斑、水泡等の炎症症状(サンバーン)が認められる。なお、UVAは透過力が高く真皮まで到達し、メラニン細胞(メラノサイト)を刺激することにより色素沈着(サンタン)を引き起こす。

2 適切である

3 適切である

4 適切である

5 適切である
 ①に比べ④の方がSPFの数値が大きく、PAの+の数が多いことから紫外線防止効果が高いと考えらえる。よって、炎天下で長時間スポーツする際には、①よりも④を使用することを勧める必要がある。

問223 (物理・化学・生物)
この男性が海水浴の際に経験した皮膚症状を含め、日焼けに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 海水浴後に生じる紅斑には、炎症メディエーターによる血管収縮が関わる。
  2. 紫外線曝露による色素沈着は、主として肥満細胞におけるメラニンの産生増強による。
  3. メラニンは、チロシンから生合成される。
  4. 色素沈着は、通常、紅斑・水疱が生じる前に起こる。
  5. 紫外線曝露は、DNA鎖上にピリミジン二量体を生じさせる。

解答・解説

解答
3、5

解説
1 誤
海水浴後に生じる紅斑には、炎症メディエーターによる血管拡張が関わる。

2 誤
紫外線曝露による色素沈着は、主としてメラニン細胞(メラノサイト)におけるメラニンの産生増強による。

3 正
メラニンとは、フェノール類物質が高分子化して色素となったものの総称のことであり、ヒトの皮膚に存在するメラニンは、チロシンからドパを経て生合成される。

4 誤
紫外線に曝露すると、早期に炎症メディエーターによる炎症(サンバーン)が認められ、その後、メラニン合成による色素沈着が認められる。

5 正
紫外線に曝露すると、紫外線の有するエネルギーにより、DNA鎖上にピリミジン二量体が生じることがある。これにより皮膚癌が誘発されることがある。

問224 (実務)
この男性が持参したお薬手帳には、ケトプロフェンにて光線過敏症を起こしたことがあるとの記載があった。この男性が持参した処方箋に1〜5のいずれかの薬剤が記載されていた場合に、ケトプロフェンと同様に光線過敏症を引き起こす可能性があり、注意を要する医薬品はどれか。1つ選べ。

 

解答・解説

解答
2又は5

動画解説

 

解説
ケトプロフェンは構造中にベンゾフェノン(下記の構造)を有するため、副作用として光線過敏症を起こすことがある。

<ベンゾフェノンが光線過敏症を起こす原理>
紫外線によりベンゾフェノンの反応性が高くなり、タンパク質と結合しやすい状態となる。タンパク質と結合したベンゾフェノンは、免疫反応の活性化を誘発し、光線過敏症を誘発する。
選択肢のうち、光線過敏症を誘発する薬物は、ジクロフェナクナトリウムと構造中にベンゾフェンを有するフェノフィブラートである。

問225 (衛生)
この男性が海水浴の際に経験した皮膚症状を含め、日焼けに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. すべての光線過敏症は、ガラス窓の内側にいれば防ぐことができる。
  2. 春先に採取されるアワビの中腸腺には、光線過敏症の原因となるフェオフォルビドが蓄積することがある。
  3. 光線過敏症は、宇宙から地上に降り注いでいるUVCが主原因である。
  4. ケトプロフェンによる光線過敏症では、光エネルギーにより薬剤中のベンゾフェノン部分が反応し、抗原物質になると考えられる。
  5. 着色料の二酸化チタンは光線過敏症を起こすので、現在食品添加物として使用されていない。

解答・解説

解答
2、4

解説
1 誤
UVAはガラスを通過するため、ガラス窓の内側にいても光線過敏症を防ぐことはできない。

2 正
アワビが藻類を捕食することにより、藻類が生成するクロロフィルが分解され、アワビの中腸腺に光線過敏症の原因となるフェオフォルビドが蓄積することがある。

3 誤
光線過敏症の主な原因は、宇宙から地上に降り注いでいるUVAである。

4 正

5 誤
二酸化チタンは、白色の着色料として食品に添加されることがあり、光線過敏症を起こすとの報告はない。

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