腎機能が低下した患者では、溶解補助剤であるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが蓄積することにより腎機能がさらに悪化することがある。
問210 (実務)
この溶解補助剤が用いられている注射剤はどれか。1つ選べ。ただし、( )内は有効成分名を示す。
- ホスミシンS静注用1 g(ホスホマイシンナトリウム)
- オメプラール注用20(オメプラゾールナトリウム)
- イトリゾール注1%(イトラコナゾール)
- セフメタゾン静注用0.5 g(セフメタゾールナトリウム)
- 硫酸カナマイシン注射液1000 mg(カナマイシン硫酸)
解答・解説
解答
3
解説
イトリゾール注1%の有効性分であるイトラコナゾールは水に溶けにくいため、溶解補助剤であるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを添加することで溶解性を高めている。
なお、他の選択肢は有効成分を塩(酸性薬物はカリウムやナトリウムを添加することにより塩を形成しており、塩基性薬物は硫酸や塩酸を添加することで塩を形成している)にすることにより溶解性を高めている。
問211 (物理・化学・生物)
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンはβ−シクロデキストリン(β−CD)の誘導体である。β−CDに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- β−CDは7つのグルコースから構成されている。
- 単糖間は、すべてβ−グリコシド結合でつながっている。
- β−CDやクラウンエーテルのように、分子の空孔に他の分子を取り込む現象を抱合という。
- β−CDは外側が親水性で、空孔に疎水性の化合物を取り込み可溶化する。
解答・解説
解答
1、4
解説
1 正
β−シクロデキストリン(β−CD)は、設問の構造式より7つのグルコースが結合したものであることがわかる。なお、6つのグルコースから形成されているシクロデキストリンをα−シクロデキストリンといい、8つのグルコースから形成されているシクロデキストリンをγ−シクロデキストリンという。
2 誤
設問の構造式よりβ−CDを構成するグルコースの1位の水酸基がアキシアル位に存在していることから、グルコースの間はすべてα−グリコシド結合していることがわかる。
3 誤
β−CDやクラウンエーテルは、空孔に他の分子を取り込む(この現象を抱接という)することができる。なお、抱合とは、生体内の代謝過程において、異物に対してグルクロン酸やグルタチオンなどが結合する現象のことである。
4 正
β−CDは外側が親水性で、空孔の内側が疎水性であることから空孔内部に疎水性物質を抱接することで可溶化することができる。
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