組織型プラスミノーゲンアクチベーター（tPA）

組織型プラスミノーゲンアクチベーター（tPA）は、血栓溶解に関与する酵素で、プラスミノーゲンを活性化してプラスミンを生成する役割を有している。プラスミンは血栓の溶解を促進する酵素で、tPAがその活性化を開始する。このプロセスは、血管内で形成された不必要な血栓を解消するために不可欠である。

tPAの役割

1. プラスミノーゲンの活性化
   • tPAは、不活性型のプラスミノーゲンをプラスミンという活性型酵素に変換する。プラスミンは血栓を構成するフィブリンを分解し、血栓を溶解する。このプロセスを線溶（血栓溶解）と呼ぶ。
   • tPAは特に血栓の形成場所でその活性を発揮し、血栓がある部位で局所的に作用する。
2. 血栓の溶解
   • tPAがプラスミノーゲンを活性化すると、生成されたプラスミンがフィブリン網を切断し、血栓を解消する。この血栓溶解作用は、血流の再開通に寄与する。
3. 血液の循環維持
   • tPAによって促進される血栓溶解作用は、血管内の通過障害を除去し、健康な血液循環を維持するために重要である。血栓が不要に長期間存在することを防ぐ。

tPAの臨床的利用

1. 線溶療法
   • tPAは、急性心筋梗塞（AMI）、急性脳梗塞（脳卒中）など、急性の血栓症の治療に使用される。これらの疾患では血栓が血管を閉塞し、臓器の機能に重大な影響を及ぼすが、tPAを投与することによって迅速に血栓を溶解し、血流を回復させる。
2. 薬剤としての使用
   • 医療現場では、rtPA（組織型プラスミノーゲンアクチベーターの組換え型）が薬剤として使用される。
3. 適応症
   • 急性心筋梗塞
   • 急性脳梗塞

tPAの使用上の注意

1. 出血のリスク
   • tPAは血栓を溶解する強力な作用を有しているが、その一方で出血のリスクも伴う。特に出血傾向がある患者や外傷がある場合、慎重に使用する必要がある。過剰な線溶が出血を引き起こすことがあるため、適切なタイミングでの投与が重要である。
2. 投与のタイミング
   • tPAは、発症から早期に投与することが最も効果的とされている。早期に血栓を溶解することで、組織への損傷を最小限に抑えることができ、出血のリスクも抑えることができる。
3. 禁忌
   • tPAは出血性の疾患や外傷がある患者には使用できないことが多く、頭蓋内出血や消化管出血などがある場合は禁忌となる。