薬剤師国家試験出題項目

糖尿病治療薬

1 糖尿病

 糖尿病とは、インスリン分泌障害やインスリン抵抗性亢進によりインスリンの作用が不足し、細胞内に糖が取り込めなくなることで慢性の高血糖状態となる疾患のことである。

1)分類

糖尿病は成因により、1型糖尿病、2型糖尿病、その他の特定の機序・疾患による糖尿病、妊娠糖尿病の4つに分類される。

2)診断基準

下記の①〜④のいずれかが確認された場合に「糖尿病型」と判定する。
ただし、①〜③いずれかと④が確認された場合には、糖尿病と診断しても良い。
① 早朝空腹時血糖値:126mg/dL以上
② 75g OGTTで2時間値(75gのブドウ糖を飲んだ2時間後の血糖値):200mg/dL以上
③ 随時血糖値:200mg/dL以上
④ HbA1c(NGSP値):6.5%以上
◇血糖値が糖尿病型(①〜③のいずれか)を示し、かつ次のいずれかの条件をみたされた場合には、初回検査だけでも糖尿病と判断できる。
・糖尿病の典型的症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)の存在
・確実な糖尿病網膜症
初回検査で、「血糖値のみ糖尿病型」「HbA1cのみ糖尿病型」の場合には再度検査し、糖尿病であるかどうかを判定する。
(糖尿病ガイドライン2018−2019 引用改変)

3)治療・管理

血糖を管理せず長期間放置すると、細小血管障害(網膜症、腎症、末梢神経障害)や大血管障害(虚血性心疾患、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症)のリスクが高まるため、糖尿病の治療では、運動療法、食事療法、薬物療法が行われる。

2 膵臓ホルモン

1)グルカゴン

・ランゲルハンス島A(α)細胞から分泌されるホルモンである。
・肝細胞のアデニル酸シクラーゼを活性化し、cAMPの上昇を介してグリコーゲン分解を促進することにより血糖上昇作用を示す。
・インスリン、ソマトスタチン、成長ホルモン分泌作用を示す。

2)ソマトスタチン

・ランゲルハンス島D(δ)細胞から分泌されるホルモンである。
・グルカゴン、インスリンの分泌抑制作用を示す。

 3)インスリン

・ランゲルハンス島B(β)細胞から分泌されるホルモンである。
・グルコースの細胞内取り込み促進作用、グリコーゲン合成促進作用、グリコーゲン分解抑制作用により血糖降下作用を示す。
・脂肪組織にグルコースの輸送を促進する結果、脂肪組織でのトリグリセリド合成を促進する。
・タンパク質の合成を促進するとともにタンパク質の分解を抑制する。

<構造>
A鎖とB鎖から形成されており、両鎖は2個のジスルフィド結合で連結されている。

<生合成>
 膵臓のβ細胞でプレプロインスリンが合成され、その後、プロインスリンとなる。プロインスリンは、B鎖–C鎖–A鎖の順でつながったポリペプチドであり、β顆粒内でプロテアーゼによる修飾を受けC鎖が取り除かれA鎖とB鎖からなるインスリンとなる。

<インスリンの分泌機構>

①:グルコースがGULT2により膵β細胞に取り込まれる。
②:取り込まれたグルコースによりミトコンドリアでATPが産生される。
③:産生されたATPによりATP感受性Kチャネルが閉口する。
④:細胞内K濃度が上昇し、脱分極が誘発され、それにより電位依存性Ca2チャネルが開口する。
⑤:細胞内Ca2が上昇することによりインスリン分泌が促進される。

3 糖尿病治療薬

1)インスリン製剤

・細胞膜にあるインスリン受容体に結合し、チロシンキナーゼを活性化する。
・肝臓では、糖新生抑制、グリコーゲン合成促進、脂肪合成促進、脂肪分解抑制作用を示す。
・骨格筋では、GULT4による糖の取り込み促進、グルコーゲン合成促進作用を示す。
・脂肪細胞では、GULT4による糖の取り込み促進、脂肪合成促進、脂肪分解抑制作用を示す。
・インスリン製剤は、超速効型、速効型、中間型、持効型、混合型、配合溶解型に分類される。

2)インスリン分泌促進薬

(1)スルホニル尿素薬
●第一世代
① トルブタミド ② アセトヘキサミド ③ クロルプロパミド
●第二世代
① グリベンクラミド ② グリクラジド
●第三世代
① グリメピリド

・膵臓のβ細胞膜に存在するSU受容体に結合し、ATP感受性Kチャネルを閉口させることにより脱分極状態にする。脱分極状態となると電位依存性Ca2チャネルが開口し、細胞内Ca2濃度が上昇することによりインスリンが分泌される。
・グリメピリドは、インスリン抵抗性改善作用を有する。
・2型糖尿病に用いられる。
・インスリン作用の増強により脂肪細胞への糖の取り込みが促進され、脂肪細胞が肥大化することで体重増加をきたすことがある。
・副作用として、低血糖、光線過敏症、無顆粒球症、肝障害を起こすことがある。

 (2)速効型インスリン分泌促進薬

① ナテグリニド ② ミチグリニドカルシウム ③ レパグリニド

・スルホニル尿素(SU)構造を有していないが、膵臓のβ細胞膜に存在するSU受容体に結合し、インスリン分泌促進作用を示す。
・SU薬に比べ、作用発現・消失が速い。
・食事30分前に服用すると低血糖を起こすことがあるため、食直前に服用する必要がある。

(3)ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)阻害薬
① シタグリプチン ② ビルダグリプチン ③ アログリプチン ④ リナグリプチン
⑤ テネリグリプチン ⑥ アナグリプチン ⑦ オマリグリプチン ⑧ トレラグリプチン

・インクレチンの分解に関わるDPP−4(ジペプチジルペプチダーゼ4)を阻害し、インクレチンの濃度を上昇させることにより血糖依存的にインスリン分泌促進作用を示すとともにグルカゴン濃度低下作用を示す。
・血中グルコース濃度が高い時に作用するため、低血糖を起こしにくい。
・副作用として、低血糖(特にSU剤と併用時)、腹部膨満感、膵炎を起こすことがある。

(4)グルカゴン様ペプチド−1作動薬
① リラグルチド ② エキセナチド ③ リキシセナチド ④ デュラグルチド
・膵臓B(β)細胞膜のGLP−1受容体を刺激し、cAMPを増加させることで血糖依存的にインスリン分泌促進作用を示すとともにグルカゴン分泌抑制作用を示す。
・生理的濃度を超えてGLP−1受容体を刺激するため、摂食中枢抑制作用、胃排泄運動抑制作用を示す。このことから、食欲低下・体重減少効果が現れる。
・副作用として、低血糖、急性膵炎、腸閉塞、下痢・便秘、悪心を起こすことがある。
・消化器系の副作用を軽減する目的で、少量から投与を開始し、漸増する。
・インスリンの代替薬ではないため、インスリン療法の絶対適応となる患者には用いられない。

3)インスリン抵抗性改善薬

① ピオグリタゾン

・主に脂肪細胞に分布するペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPAR−γ)を刺激し、前駆脂肪細胞から小型脂肪細胞への分化促進と大型(肥大化)脂肪細胞のアポトーシスを誘発することでTNF–α産生抑制、アディポネクチン産生促進を介して、インスリン抵抗性を改善する。
・2型糖尿病(インスリン抵抗性が推定された場合)に用いられる。
・副作用として、心不全、浮腫、肝障害、体重増加を起こすことがある。

4)ビグアナイド系薬

① メトホルミン ② ブホルミン

・AMPキナーゼを活性化する。
・肝臓において、糖新生を抑制する。また、脂肪酸の合成抑制・分泌促進により肝臓内脂肪含量を減少させ、インスリン抵抗性を改善する。
・骨格筋においてGULT−4を細胞膜上に移動させて、糖の取り込みを促進する。
・インスリン分泌を促進せず、血糖低下作用、インスリン抵抗性改善効果を発揮することから、体重増加を助長しにくい。
・副作用として、乳酸アシドーシスを起こすことがある。
・ヨード製剤を使用する際には、前後2日間は本剤の投与を中止する。

5)α−グルコシダーゼ阻害薬

① ボグリボース ② アカルボース ③ ミグリトール

・小腸上皮細胞において二糖類分解酵素であるα−グルコシダーゼを阻害し、単糖の生成を抑制することで、腸管からの糖の吸収を遅らせる(食後高血糖を改善する)。
・アカルボースはα−グルコシダーゼを阻害するとともにα–アミラーゼも阻害する。
・副作用として、軟便、下痢、放屁増加、腹部膨満、腸閉塞を起こすことがある。

6)選択的SGLT2阻害薬

① イプラグリフロジン ② ダパグリフロジン ③ トホグリフロジン
④ ルセオグリフロジン ⑤ カナグリフロジン ⑥ エンパグリフロジン

・SGLT2(sodium dlucose co−transporter 2)阻害し、腎の近位尿細管でのグルコースの再吸収を抑制することにより血中の過剰なグルコースを体外への排泄を促進する。

・副作用として、尿路感染症、脱水を起こすことがあるため、十分な水分摂取を行う必要がある。

7)糖尿病末梢神経障害治療薬

① エパルレスタット

・グルコースからソルビトールへの変換に関わるアルドース還元酵素を阻害し、高血糖による神経細胞内のソルビトールの蓄積を抑制することで糖尿病神経障害の自覚症状を改善する。
・副作用として、血小板減少、肝機能障害、腎機能障害、消化器症状を起こすことがある。
・血糖値が高い状態で効果を示しやすいので、食事30分前に服用する。

●糖尿病神経障害に用いられる薬
 エパルレスタット以外に、糖尿病神経障害の自覚症状を改善する薬として、メキシレチン、デュロキセチンが用いられることがある。

・メキシレチン
知覚神経のNaチャネルを遮断し、知覚神経の活動電位を抑制することで糖尿病神経障害の自覚症状を改善する。

・デュロキセチン
セロトニン−ノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、下行性疼痛抑制系を賦活化させることで糖尿病神経障害の自覚症状を改善する

糖尿病治療薬 PDFテキスト

◇関連問題◇
第97回問160、第98回問252〜253、第99回問161、第100回問36、第101回問258〜259、第103回問153

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