以下の化学種のうち、ベンジルカチオンが最も安定化されているのはどれか。1つ選べ。
解答・解説
解答
4
解説
カルボカチオンとは、sp³混成軌道を持つ炭素原子から脱離基が電子対とともに離脱した際に生じる、正電荷を帯びた炭素陽イオンである。この炭素は最外殻電子が6個であり、オクテット則を満たさず不安定な状態にある。そのため、電子供与基が存在すると正電荷を打ち消す方向に働き、カルボカチオンはエネルギー的に安定化される。
メトキシ基(–OCH₃)は、酸素原子の非共有電子対を持ち、芳香環(sp²混成炭素)に結合することで電子供与基として働く。この電子が芳香環と共鳴し、電子密度を高めるため、特にオルト位およびパラ位にある正電荷が安定化されやすくなる。その結果、ベンジルカチオンにメトキシ基が存在すると、共鳴構造を形成しやすく、正電荷が分散されて安定性が高まる。
複数の置換基が存在する場合、特にオルト位やパラ位にメトキシ基がある構造は共鳴により高い安定化効果を受ける。選択肢4の構造では、オルト位とパラ位の両方にメトキシ基が配置されており、それぞれが共鳴構造に電子を供与することで、ベンジルカチオンの正電荷が分散され、最も安定な構造となっている。
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