2歳8ヶ月女児。1週間前から腹痛を訴えることがあり、今朝になって、嘔吐したため、近医を受診した。母親からの聞き取りでは、日頃から鉛を含む金属製アクセサリーを舐める癖があり、誤飲したおそれがあるとのことであった。レントゲン検査では異物は見当たらなかった。尿中のδ-アミノレブリン酸濃度は10mg/Lと高値であった。また、血液検査では有核赤血球数の増加がみられ、赤血球遊離プロトポルフィリン濃度は180μg/dL(基準値30〜86μg/dL)、原子吸光光度計で測定した血中鉛濃度は75μg/dLであった。
問240(実務)
薬剤師が医師に提案する解毒薬として適切なのはどれか。2つ選べ。
- EDTAカルシウム二ナトリウム
- ホメピゾール
- メチレンブルー
- 亜硝酸アミル
- ジメルカプロール(BAL)
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解答
1、5
解説
本症例では、鉛を含むアクセサリーの経口曝露が疑われており、以下の所見から鉛中毒と推察される。
・消化器症状(腹痛、嘔吐)
・尿中δ-アミノレブリン酸の上昇
・有核赤血球の増加
・赤血球遊離プロトポルフィリンの高値
・血中鉛濃度の異常高値
1 正
EDTA(エチレンジアミン四酢酸)カルシウム二ナトリウムは、鉛中毒に広く用いられる。鉛と強固なキレートを形成し、尿中への排泄を促進する作用を有する。
2 誤
ホメピゾールは、エチレングリコール中毒やメタノール中毒に使用される解毒薬であり、鉛中毒には無効である。
3 誤
メチレンブルーは、中毒性メトヘモグロビン血症に対する解毒薬であり、鉛中毒には無効である。
4 誤
亜硝酸アミルは、シアン化物中毒やアジ化ナトリウム中毒などに使用される薬剤であり、鉛中毒には無効である。
5 正
ジメルカプロール(BAL)は、鉛をはじめとする重金属中毒(ヒ素、水銀、銅、クロムなど)に対して使用される解毒薬である。
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問241(衛生)
ヘムの生合成経路を表した下図中の1〜5のうち、この女児の中毒原因物質によって抑制される反応はどれか。2つ選べ。
[su_spoiler title=”解答・解説”]
解答
2、5
解説
【ヘム合成の概要】
ヘムは、赤血球中のヘモグロビンの構成要素として、酸素の運搬に不可欠な分子である。ヘムの合成は、グリシンとスクシニルCoAの反応から始まり、最終的に鉄(Fe2+)をプロトポルフィリンIXに挿入することで完成する。合成経路の初期と後期に鉛の影響を受ける重要な段階がある。
▶ 鉛が阻害する2つの重要酵素
① δ-アミノレブリン酸脱水酵素
・ALA(δ-アミノレブリン酸)は、ヘム合成の初期段階で生成される中間体である。
・鉛はこのALA脱水酵素を阻害し、ALAの次段階(ポルホビリノーゲン)への代謝を妨げる。
・結果として、ALAからポルフォビリノーゲンへの変換が妨げられ、ALAが血中および尿中に蓄積する。
② フェロキラターゼ(鉄挿入酵素)
・ヘム合成の最終段階では、プロトポルフィリンIXにFe2+を挿入する必要がある。
・鉛はこのフェロキラターゼを阻害し、鉄の挿入を妨げてヘムの合成を停止させる。
・この際、Fe3+→ Fe2+への還元も鉛によって阻害される。
・結果として、プロトポルフィリンやコプロポルフィリンが蓄積する。
【鉛中毒のマーカーとなる検査値】
鉛中毒の診断には、以下のような検査所見が利用される
血清・尿中のALA(δ-アミノレブリン酸):増加
赤血球中・尿中のプロトポルフィリン、コプロポルフィリン:増加
これらのマーカーは、鉛によるヘム合成阻害の反映であり、慢性鉛中毒の早期発見に有用である。
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