71歳女性。身長152cm、体重48kg。12年前に2型糖尿病と診断されインスリン強化療法を受けた。最近は病状が安定し、経口薬でコントロールされている。以前から血圧が低く、近年は立ちくらみもあり、不定愁訴も多い。最近1年間は、月1回通院して、処方1の薬剤を服用していた。前回(1ヶ月前)の検査値を下に示す。
問296(病態・薬物治療)
この患者の状態について、あてはまるのはどれか。2つ選べ。
- ネフローゼ症候群
- 慢性腎臓病(CKD)
- 慢性心不全
- 糖尿病性神経障害
- 肝硬変
解答・解説
解答
2、4
解説
1 誤
ネフローゼ症候群とは、たんぱく尿、低アルブミン血症、浮腫、高コレステロール血症を呈する症候群であり、診断基準として「タンパク尿:3.5g/日以上」「低アルブミン血症:血漿アルブミンが3.0g/dL以下」である。本患者は、血漿アルブミン濃度が3.5g/dLであることから、ネフローゼ症候群の可能性は低い。
2 正
慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)とは、推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2未満の腎機能低下、あるいはたんぱく尿など腎機能障害を示唆する所見が3ヶ月以上持続する状態である。本患者の1ヶ月前の検査所見において、eGFRが 38.0mL/min/1.73m2であることから、慢性腎臓病(CKD)の可能性が高い。
3 誤
心不全では、BNPが増加する。本患者の1ヶ月前の検査所見において、BNPが基準値以下であることから、慢性心不全の可能性は低い。
4 正
糖尿病末梢神経障害では、感覚異常、運動神経異常による筋力低下、自律神経異常に伴う消化器症状、血圧低下などを呈することがある。本患者は血圧が低く、立ちくらみもあり、不定愁訴も多いことから、糖尿病末梢神経障害の可能性が高い。
5 誤
肝機能を示すAST(基準値:8〜33IU/L)、ALT(基準値:4〜45IU/L)、γGTP(女性における基準値:30IU/L以下)、総ビリルビン(基準値:0.4〜1.5mg/dL)が正常範囲にあるため、肝硬変の可能性は低い。
問297(実務)
前回の受診時に「夜中に足がつる」、「おなかの調子が悪い」と訴えがあり処方2が追加された。
患者から「その後、次第に筋肉痛のような痛みが持続するようになった」と訴えがあり、薬剤師は、今回の受診時の検査値を前回と比較した。
医師に処方変更を提案する内容として、適切なのはどれか。1つ選べ。
- 酪酸菌(宮入菌)製剤を中止する。
- 芍薬甘草湯を中止する。
- シタグリプチンリン酸塩水和物を減量する。
- フロセミドを増量する。
- インスリン自己注射を追加する。
解答・解説
解答
2
解説
前回(1ヶ月前)の検査値と今回の検査値を比較すると、血圧上昇、K値が低下していることから、処方2の芍薬甘草湯エキス顆粒による副作用である偽アルドステロン症を起こしていると推察される。また、低カリウム血症の結果として、横紋筋融解症が現れることがあり、前回(1ヶ月前)の検査値と今回の検査値を比較すると、クレアチンキナーゼ(CK)も上昇していることから、横紋筋融解症を併発していると推察される。これらのことから芍薬甘草湯を中止する必要がある。
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