13歳女児。身長150cm、体重42kg。昨夜から38.5°Cの発熱があり、今朝になっても熱が下がらず、筋肉痛、頭痛、倦怠感を訴えたため、午前中に近医を受診した。インフルエンザと診断され、母親が処方箋(処方1及び2)を持って来局した。薬剤師が薬歴を確認したところ、バロキサビルマルボキシル錠による発疹の副作用歴があったので、薬剤師から処方医へ連絡し、処方1が処方3へ変更となった。
問262(薬理)
処方1及び3のいずれかの抗インフルエンザ薬の作用機序として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- RNA依存性RNAポリメラーゼを阻害することで、ウイルスRNAの複製を阻害する。
- キャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を阻害することで、ウイルスmRNAの合成を阻害する。
- ウイルスに結合してエンベロープの融合・脱殻を阻害することで、ウイルスRNAの宿主細胞への輸送を妨げる。
- ノイラミニダーゼを阻害することで、新しく形成されたウイルスの感染細胞からの遊離を抑制する。
- RNA依存性DNAポリメラーゼを阻害することで、ウイルスRNAからDNAへの逆転写を阻害する。
解答・解説
解答
2、4
動画解説
解説
1 誤
ファビピラビルに関する記述である。ファビピラビルは、細胞内でファビピラビルリボシル三リン酸化体に代謝され、RNAポリメラーゼを阻害し、RNAの複製を抑制することによりインフルエンザウイルスの増殖を抑制する。
2 正
バロキサビル(処方1)は、インフルエンザウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を選択的に阻害し、ウイルスmRNAの合成を抑制することによりウイルス増殖を抑制する。
3 誤
アマンタジンに関する記述である。アマンタジンは、A型インフルエンザウイルスのM2イオンチャネルを阻害し、エンベロープの融合・脱殻を阻害することで、ウイルスRNAの宿主細胞への輸送を妨げる。
4 正
オセルタミビル(処方3)は、ノイラミニダーゼを阻害することで、新しく形成されたウイルスの感染細胞からの遊離を抑制する。
5 誤
逆転写酵素阻害薬(ラミブジンなど)に関する記述である。逆転写酵素阻害薬は、HIV感染細胞内で三リン酸化体となり、RNA依存性DNAポリメラーゼを阻害することで、逆転写を阻害する。
問263(実務)
薬剤師が母親に伝える内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 平熱に戻った場合は、処方3の使用を中止してください。
- 解熱した翌日より学校に登校できます。
- 発熱時には、カフェインを多く含むお茶やコーヒーをとるようにしてください。
- 処方3は、本日中に服用を開始してください。
- 異常行動による事故を防止するため、お子さんが一人にならないよう配慮してください。
解答・解説
解答
4、5
解説
1 誤
オセルタミビルは、平熱に戻っても処方されている薬を飲み切る必要がある。
2 誤
インフルエンザウイルスに感染した場合、発熱した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過している場合、登校することが可能である(学校保健安全法第19条)。
3 誤
発熱時に利尿作用を有するカフェインを多く摂取すると脱水症状を誘発することがあるため、発熱時には、カフェインを多く含むお茶やコーヒーを控える必要がある。
4 正
処方3(オセルタミビル)は、抗インフルエンザ作用を十分に発揮するためにインフルエンザ様症状の発現から2日以内(48時間以内)に投与する必要がある。
5 正
インフルエンザに罹患すると、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無に関わらず、異常行動に関連すると考えられる転落死等が報告されている。異常行動による事故を防止するために、少なくとも発熱から2日間、保護者等は転落等の事故に対する防止対策(子供が一人にならないようにする、玄関、部屋の窓を確実に施錠するなど)を講ずる必要がある。
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