71歳男性。50年前から喫煙習慣がある(ブリンクマン指数:1200)。長期間続く咳嗽、喀痰、喘鳴と階段歩行時の息切れを訴え、近医を受診した。精査の結果、COPDと診断され、以下の薬剤が処方された。
問290(病態・薬物治療)
この患者の身体所見と臨床検査に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 胸部聴診にて捻髪音が聴取される。
- 重症化すると高炭酸ガス血症を呈しやすい。
- 1秒率(FEV1.0/FVC)が 70%未満である。
- 代謝性アルカローシスを呈しやすい。
- シアル化糖鎖抗原KL−6が上昇する。
解答・解説
解答
2、3
解説
1 誤
捻髪音(ねんぱつおん)とは、胸部聴診にて聴取される「パチパチ、バリバリ」という音のことであり、COPDでは認められない。なお、捻髪音は、間質性肺炎や肺線維症で認められることがある。
2 正
COPDが重症化すると、呼気中へのCO2の排泄が低下するため、 高炭酸ガス血症を生じることがある。
3 正
COPDの診断基準を以下に示す
・気管支拡張薬投与後のスパイロメーターを使用した呼吸機能検査で1秒率が70%未満である
・気道閉塞を起こす疾患(喘息、肺結核、肺がん、間質性肺炎など)を除外する
4 誤
COPDでは、呼気中へのCO2の排泄が低下するため、血液のpHが低下する呼吸性アシドーシスを呈することがある。
5 誤
COPDでは、シアル化糖鎖抗原KL−6の上昇は認められない。なお、間質性肺炎や肺線維症では、シアル化糖鎖抗原KL−6の上昇が認められる。
問291(実務)
この患者が処方箋を持参し近所の薬局を訪れた。薬剤師がこの患者に対して行う確認・説明として適切なのはどれか。2つ選べ。
- 閉塞隅角緑内障でないことを確認する。
- 口腔内カンジダ予防のため、吸入後にうがいをするよう説明する。
- 急性増悪時には、吸入剤を頓用で使用するよう説明する。
- 禁煙指導を行い、テオフィリンの副作用に注意する。
- テオフィリンによる赤色尿は心配ないことを説明する。
解答・解説
解答
1、4
解説
1 正
処方1のチオトロピウム塩酸塩水和物は、抗コリン作用を有するため、閉塞隅角緑内障に禁忌とされている。そのため、チオトロピウム塩酸塩水和物が処方されているときには、閉塞隅角緑内障でないか確認する必要がある。
2 誤
本処方には、副腎皮質ステロイド性薬を含有する吸入剤が処方されていないことから、口腔内カンジダを予防するために吸入後うがいをする必要はない。
3 誤
チオトロピウム塩酸塩水和物2.5µgレスピマットは、COPDの長期管理薬であり、急性増悪時に用いるものではない。
4 正
禁煙することにより喫煙によるCYP1A2の誘導が解除され、CYP1A2により代謝される薬物(テオフィリン)の血中濃度が上昇することがある。
5 誤
テオフィリンの副作用として、横紋筋融解症を起こすことがある。そのため、テオフィリンによる赤色尿が現れた場合には、受診するように説明する必要がある。
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