15歳女性。下痢、腹痛が続くため2ヶ月前に病院を受診し、検査した結果、潰瘍性大腸炎と診断された。現在は以下の処方で治療されている。なお、母親はB型肝炎のキャリアである。
問288(病態・薬物治療)
この患者の病態の説明として正しいのはどれか。1つ選べ。
- 組織生検では、小腸にも異常が認められる。
- 便培養検査で原因菌が特定される。
- 体重が増加する。
- 血液検査では、炎症反応は陰性である。
- 症状は再燃と寛解を繰り返す。
解答・解説
解答
5
解説
潰瘍性大腸炎は、免疫異常などにより大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患であり、その主症状として繰り返し起こる粘血便や下痢、腹痛が認められる。
1 誤
本疾患における病変部位は、大腸に限局される。
2 誤
潰瘍性大腸炎は、免疫異常により起こると考えられており、菌感染によるものではないため、便培養検査により原因菌を特定することはできない。
3 誤
発熱、貧血、体重減少などの全身症状を呈することがある。
4 誤
潰瘍性大腸炎は、大腸の炎症性疾患であるため、血液検査では、炎症反応(CRP陽性、白血球数増加など)が認められる。
5 正
潰瘍性大腸炎では、症状の再燃と寛解を繰り返す。
問289(実務)
その後、症状が増悪したため、入院してインフリキシマブ(遺伝子組換え)点滴静注用を1回投与量として体重1 kg当たり5 mg投与することになり、予め治療チームで話合いをすることになった。薬剤師が他職種に提供する情報として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 治療中はインフルエンザワクチンの接種を避けること。
- 治療中は麻疹ワクチンの接種を避けること。
- 胸部レントゲン検査を行い結核感染の有無を確認すること。
- 間質性腎炎の検査を定期的に実施すること。
- 肝機能に異常がなければ、B型肝炎ウイルス検査は不要であること。
解答・解説
解答
2、3
解説
1 誤
インフリキシマブは、抗ヒトTNF−αモノクローナル抗体製剤であり、免疫抑制作用を有しているため、本剤投与中には、生ワクチン(麻疹ワクチンなど)の接種を行わないこととされているが、不活化ワクチン(インフルエンザワクチンなど)の接種を行っても問題ない。
なお、本剤投与中は、免疫力が低下しているため、インフルエンザの感染を予防するために、インフルエンザワクチンの接種が推奨されている。
2 正
解説1参照
3 正
本剤を投与することにより結核、敗血症などの重篤な感染症が悪化することがあるため、本剤を投与する前には、結核に関する十分な問診及び胸部レントゲン検査に加え、インターフェロン−γ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認することとされている。
4 誤
本剤投与により、間質性腎炎を引き起こすとの報告はない。なお、本剤投与により間質性肺炎を引き起こすことがある。
5 誤
本剤を含む抗TNF製剤によるB型肝炎ウイルスの再活性化が報告されているので、本剤を投与する前には、B型肝炎ウイルス感染の有無を確認する必要がある。
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