82歳女性。以前より意識清明であったが、記銘力の低下を指摘されていた。今回、トイレに行こうとして転倒し、大腿骨骨折のため整形外科に入院した。 入院中に認知機能の低下、パーキンソニズム、レム睡眠行動障害が現れたほか、 PETにて後頭葉の血流低下を認め、アルツハイマー型以外の認知症が強く疑われ、ドネペジル塩酸塩口腔内崩壊錠による治療が開始された。
問286(病態・薬物治療)
この患者の認知症の病態と症状に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 幻視が現れることが多い。
- 病理組織学的には、大脳にレビー小体が認められる。
- 記憶障害は周辺症状である。
- ニコチン性アセチルコリン受容体に対する自己抗体が存在する。
- 運動ニューロンが傷害され、全身の筋力低下が認められる。
解答・解説
解答
1、2
解説
本患者は、下記のことからレビー小体型認知症に罹患していると考えられる。
・パーキソニズム、レム睡眠行動障害が現れている
・後頭葉の血流低下が認められている
(アルツハイマー型認知症では後頭葉の血流低下が認められにくく、レビー小体型認知症では後頭部の血流低下が認められることが多いことから、後頭部の血流低下はアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の鑑別に用いられる。)
・アルツハイマー型以外の認知症が強く疑われ、ドネペジル塩酸塩口腔内崩壊錠による治療が開始されている。
(ドネペジル塩酸塩口腔内崩壊錠は、アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症に用いられることから、アルツハイマー型認知症以外にドネペジル塩酸塩口腔内崩壊錠を用いる場合は、レビー小体型認知症であると考えられる)
1 正
レビー小体型認知症では、幻視、パーキソニズム、レム睡眠行動障害が現れることがある。
2 正
3 誤
レビー小体型認知症では、中核症状(脳の障害により直接起こる症状)として、記憶障害、失語、見当識障害などが認められることがあり、周辺症状(中核症状に付随して起こる二次的な症状)として、不眠、徘徊、幻覚、焦燥、不安などが認められる。
4 誤
ニコチン性アセチルコリン受容体に対する自己抗体が存在する疾患として、重症筋無力症がある。
5 誤
運動ニューロンが傷害され、全身の筋力低下が認められる疾患として、ALS(筋萎縮性側索硬化症)がある。
問287(実務)
ドネペジル製剤の医薬品リスク管理計画書(RMP)の概要から、下記のような 「重要な特定されたリスク」が確認できた。これらの回避のために、薬剤師の対応 として適切なのはどれか。2つ選べ。

- 心機能のモニタリングの必要性を医師に伝える。
- 急性膵炎予防のため、カモスタットメシル酸塩錠の併用を医師に提案する。
- パーキンソニズムが悪化した場合、ドネペジル塩酸塩口腔内崩壊錠の増量を医師に提案する。
- 消化性潰瘍予防のため、ランソプラゾール口腔内崩壊錠の投与を医師に提案する。
- 血小板減少の早期発見のため、出血などに注意することを医療従事者間で情報共有する。
解答・解説
解答
1、5
解説
1 正
心機能異常(徐脈、心ブロック、心室頻拍など)を早期発見する目的で心機能モニタリングを行うことが推奨される。
2 誤
急性膵炎を予防する目的で、カモスタットメシル酸塩を用いることはない。カモスタットメシル酸塩は、タンパク分解酵素阻害剤であり、急性膵炎の治療に用いられる。
3 誤
ドネペジル塩酸塩は、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有していることから、パーキソニズムが悪化させる恐れがある。このことからパーキソニズムが悪化した場合には、ドネペジル塩酸塩の休薬、減量を検討する必要がある。
4 誤
消化性潰瘍を予防する目的で、ランソプラゾールを用いることはない。ランソプラゾールは、胃酸分泌抑制作用を有していることから、消化性潰瘍の治療に用いられる。
5 正
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