63 歳男性。根治切除不能な悪性黒色腫と診断され、外来化学療法でニボルマブが投与されることになった。薬剤師が初回投与時に患者のもとを訪れ、抗がん薬の特徴や注意すべき副作用の説明を行うことになった。
問258(実務)
ニボルマブの市販後に報告されている以下の副作用のうち、その作用機序から考えて、間接的に生じると思われる副作用として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- 間質性肺炎
- 低血糖
- 重症筋無力症
- 下痢
- 甲状腺機能障害
解答・解説
解答
2
解説
ニボルマブは、モノクローナル抗体であり、活性型T細胞の表面に発現するPD−1に作用し、PD−1とPD−L1及びPD−L2との結合を阻害することによりT細胞への抑制シグナルを減少させることで、がん細胞に不応答となっていた腫瘍抗原特異的なT細胞の再活性化作用を示す。ニボルマブはT細胞活性化作用を有していることから、過剰な免疫反応による副作用が発現することがある。
過剰な免疫反応により起こる副作用
間質性肺炎、重症筋無力症、心筋炎、大腸炎、小腸炎、重度の下痢、1型糖尿病、血液障害、肝機能障害、甲状腺機能障害、下垂体機能障害、神経障害、腎障害、副腎障害、脳炎、皮膚障害 など
選択肢のうち、過剰な免疫反応により、間接的に生じると思われる副作用は、低血糖である。ニボルマブを投与すると、甲状腺機能障害や下垂体機能障害、副腎障害が起こることにより血糖上昇ホルモン(甲状腺ホルモン、成長ホルモン、副腎髄質ホルモン、副腎皮質ホルモン)が分泌されにくくなり、低血糖を起こすと考えられる。
問259(薬理)
ニボルマブは別の薬物を併用すると作用増強が現れる。理論的に考えて、同一細胞における別の標的分子に働くことで、ニボルマブと相乗作用を示すと考えられる併用薬の作用点として適切なのはどれか。1つ選べ。
- RANKL(NF−κB活性化受容体リガンド)
- CD20
- CTLA−4(細胞傷害性Tリンパ球抗原−4)
- VEGFR2 (血管内皮増殖因子受容体2型)
- HER2 (ヒト上皮増殖因子受容体2型)
解答・解説
解答
3
動画解説
解説
ニボルマブの作用を増強させる目的で、ニボルマブと併用される薬としてイピリムマブがある。イピリムマブは、モノクローナル抗体であり、活性化T細胞表面に発現するCTLA−4に作用し、CTLA−4と抗原提示細胞に存在するCD80/CD86との結合を阻害することによりT細胞への抑制シグナルを減少させることで、腫瘍抗原特異的なT細胞の増殖、活性化作用を示す。また、制御性T細胞(Treg)の機能低下及び腫瘍組織におけるTreg数の減少により腫瘍免疫反応を亢進させ、抗腫瘍効果を示すと考えられる。
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