核磁気共鳴スペクトル測定法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 核磁気共鳴スペクトルの測定には、一般にラジオ波領域の電磁波が用いられる。
- 19Fを利用して有機化合物中にあるフッ素の核磁気共鳴スペクトルを測定できる。
- ベンゼンの水素は、π電子による遮へい効果を受ける。
- 測定溶媒中に重水を添加することにより、アルケンに結合している水素のシグナルを消失または移動させることができる。
- プロトン間のスピン−スピン結合定数は、外部磁場の強さの影響を受ける。
核磁気共鳴スペクトル測定法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
解答
1、2
解説
1 正
核磁気共鳴スペクトルの測定では、外部磁場中におかれた化学物質にラジオ波を照射し、低エネルギーの核スピン状態から高エネルギーの核スピン状態に遷移する現象を利用して、化学物質の構造を解析する。
2 正
外部磁場の中に原子核を置くと、そのエネルギー状態が低エネルギーと高エネルギーの準位に分裂することがある。この効果をゼーマン分裂という。ゼーマン分裂において、エネルギー準位は2I+1に分裂し、I≠0の場合、NMRを測定することができる。
19Fにおいては、I=1/2であるため、19Fを利用して有機化合物中にあるフッ素の核磁気共鳴スペクトルを測定できる。
3 誤
分子内にπ電子(芳香環、二重結合、三重結合)が存在すると、外部磁場により、π電子が環電流を生じて、局所的に誘起磁場が発生し、近傍の原子核の共鳴周波数に影響を与える。この現象を磁気異方性効果という。
上記の図より、ベンゼン環のπ電子が環電流を生じることで、ベンゼン環の上下、内部には遮へい効果が現れ、ベンゼン環の外部には、反遮へい効果が現れる。よって、ベンゼンの水素は、π電子による反遮へい効果を受ける。
4 誤
アルケンに結合している水素は、重水を添加しても重水素に置換されることがないため、測定溶媒中に重水を添加しても、アルケンに結合している水素のシグナルを消失または移動させることはできない。なお、ヘテロ原子に結合した水素(−OHや−NH)は、重水を添加すると重水素に置換されるため、測定溶媒中に重水を添加することにより、ヘテロ原子に結合している水素のシグナルを消失または移動させることができる。
5 誤
スペクトルで表されるシグナルは、近くに存在するプロトンにより作られる磁場の影響を受け、分裂して現れる。このシグナルの分裂間隔をスピン−スピン結合定数といい、この値は外部磁場の影響を受けず、常に一定となる。
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