45歳女性。10年前より双極性障害で加療中。処方1の維持療法で病状は安定していたが、ここ1ヶ月で症状が悪化したため、本日新たに処方2が追加された。
問296 (実務)
今回追加処方された薬剤の重大な副作用の初期症状の組合せとして、患者に伝えるべきことはどれか。1つ選べ。
- 皮膚の広い範囲が赤くなる。38℃以上の熱がでる、眼が充血する。唇や口の中がただれる、のどが痛む、体がだるい。
- 急に強い空腹感をおぼえる、冷や汗がでる、手足がふるえる、力が抜けた感じがする。
- 息切れがする、息苦しくなる、空咳がでる、発熱する。
- 筋肉が痛んだりこわばったりする、手足がしびれる、手足に力が入らない、尿の色が赤褐色になる。
- 眼の痛みを生じる。眼がかすむ、頭痛がする、吐き気がする。
解答・解説
解答
1
動画解説
解説
今回追加されたラモトリギンは重大な副作用として、中毒性表皮壊死融解症及び皮膚粘膜眼症候群を起こすことがある。そのため、十分な観察を行い、発熱、眼充血、顔面の腫脹、口唇・口腔粘膜や陰部のびらん、皮膚や粘膜の水疱、紅斑、咽頭痛、そう痒、全身倦怠感等の異常を認めた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこととされている。
1 正
2 誤
低血糖の初期症状に関する記述である。ラモトリギンでは重大な副作用として、低血糖が現れるとの報告はない。
3 誤
急性肺障害および間質性肺炎の初期症状に関する記述である。ラモトリギンでは重大な副作用として、急性肺障害および間質性肺炎が現れるとの報告はない。
4 誤
横紋筋融解症の初期症状に関する記述である。ラモトリギンでは重大な副作用として、横紋筋融解症が現れるとの報告はない。
5 誤
眼圧上昇の初期症状に関する記述である。ラモトリギンでは重大な副作用として、眼圧上昇が現れるとの報告はない。
問297 (病態・薬物治療)
この患者の薬物治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- ラモトリギンは、気分エピソードの中でも、特にうつ状態に対する効果が強い。
- ラモトリギンが追加されたので、定期的なラモトリギンの血中濃度測定を行う必要がある。
- 炭酸リチウムの1日投与量が400 mgなので、定期的な血中濃度測定を行う必要はない。
- 炭酸リチウムの中毒が疑われる際の治療には、ループ利尿薬が適している。
- ラモトリギンが使用できない場合は、オランザピンを推奨する。
解答・解説
解答
1、5
解説
1 正
ラモトリギンは、双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制に用いられる。双極性障害における気分エピソードは、うつ症状や躁症状が現れている状態のことであり、特にラモトリギンは、うつ症状が現れている状態に対する効果が強いとされている。
2 誤
ラモトリギンは、血中濃度と薬効及び副作用との関係が明らかにされていないことから、定期的に血中濃度測定を行う必要はない。
3 誤
維持療法における炭酸リチウムの用法・用量を以下に示す。
「維持量1日通常200〜800 mgを1〜3回分割経口投与する。」
上記より、本患者は1日量400 mgを分2で服用していることから、用法・用量は特に問題ない。
ただ、維持量投与中には、2〜3ヶ月に1回をめどに、血清リチウム濃度の測定結果に基づきトラフ値を評価しながら使用することとされている。
そのため、維持量として問題はないが、定期的に血中濃度測定を行う必要がある。
4 誤
炭酸リチウムの中毒が疑われる際の治療には、補液、利尿剤(マンニトール、アミノフィリン等)等により本剤の排泄促進、電解質平衡の回復を図ること、利尿剤に反応しない場合は、血液透析を施行することとされている。なお、ループ利尿薬は、ナトリウムの排泄を促進することにより腎におけるリチウムの再吸収を代償的に促進させるため、リチウム中毒を誘発する恐れがある。
5 正
オランザピンは、双極性障害における躁状態及びうつ状態の改善に用いることができるため、ラモトリギンが使用できない場合は、オランザピンを代替薬として使用することが可能である。
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