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第101回薬剤師国家試験 問117

ヒト細胞における既知遺伝子の発現をPCR(polymerase chain reaction)法により検出するために以下の実験を行った。実験方法と考察に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
【実験
ヒト細胞から抽出したRNAを用いて、逆転写反応により相補的DNA(cDNA)を合成した。このcDNAを鋳型として、既知遺伝子の部分的塩基配列を増幅する特異的なセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを用いて、定法に従い24、26、29及び33サイクルでのPCR法を行った。得られた増幅DNA断片をDNA検出試薬を含むアガロースゲル電気泳動法にて分離し、図のような結果(レーン1〜4)を得た。なお、レーン番号の順序は、サイクル数の順序とは一致しない。また、各サイクルでのDNA増幅率はほぼ100%であり、上記サイクル数の間では、DNAは指数関数的に増幅された。

  1. PCRとは、DNAの熱変性→プライマーのアニーリング→DNA鎖の合成・伸長からなる3段階反応を同一の温度下において繰り返すことで、目的DNAを増幅する反応である。
  2. 本実験で行った逆転写反応では、mRNAの5´末端に相補的な配列をもつプライマーを用いた。
  3. レーン1〜4のDNA断片のうち、レーン1は26サイクルのDNA断片と考えられる。
  4. 図の結果より、増幅されたDNA断片は正の電荷を帯びていると考察できる。
  5. 図中のレーン2とレーン3では、両者のDNA量は理論上約16倍異なると考察される。

解答・解説

解答
3、5

解説
1 誤
PCR法とは、DNAの熱変性(約95℃)→プライマーのアニーリング(約55℃)→DNA鎖の合成・伸長(約72℃)からなる3段階反応を異なる温度下において繰り返すことで、目的DNAを増幅する反応である。

2 誤
本実験で行った逆転写反応では、鋳型mRNAの3’→5’方向に沿って、cDNAが合成される。そのため、mRNAの3’末端(転写が開始される位置)に相補的な配列をもつプライマーを用いる必要がある。

3 正
図の白い部分(増幅DNA断片)の幅が大きいほど、DNAの量が多い。PCR法では、DNA増幅回数を増やすごとに2倍ずつDNAの量が増幅するため、DNA増幅回数が多いほど、DNA量は多くなる。よって、レーン1:26サイクル、レーン2:33サイクル、レーン3:29サイクル、レーン4:24サイクルで得られたDNA断片と考えられる。

4 誤
図の電気泳動の方向が陰極(-)→陽極(+)に向かっていることから、増幅されたDNA断片は負の電荷を帯びていると考えられる。なお、DNA構造中のリン酸残基が負の電荷を帯びていることから、DNAは負の電荷を帯びている。

5 正
レーン2:33サイクル、レーン3:29サイクルで得られたDNA断片であると考えられることから(解説3参照)、レーン2とレーン3で増幅したDNA量は4サイクル分異なる。よって、両者のDNA量は理論上約16倍(24倍)異なると考察される。

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