77歳男性。163 cm、65.0 kg、body mass index (BMI) 24.5。現在、糖尿病治療のため、下記の薬剤を服用している。

これまで、HbA1c(国際標準値)は7.0%前後で推移していたが、最近になり9.0%まで上昇したため、以下の処方が追加された。

問218 (実務)
上記の追加処方に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 低血糖のリスクは、特にスルホニルウレア剤との併用により増加するおそれがある。
- 併用により低血糖が起こった場合には、砂糖を摂取するように患者に伝える。
- ボグリボースとの併用は禁忌なので、疑義照会が必要である。
- 飲み忘れを防止するために、食後服用への変更も可能である。
解答・解説
解答
1、4
解説
1 正
アログリプチンは、DPP−4(ジペプチジルペプチターゼ−4)阻害薬であり、GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)、GIP(グルコース依存性インスリン分泌促進ペプチド)の不活化を遅延させることによりグルコース依存的にインスリン分泌を促進する。アログリプチン安息香酸塩錠単剤では、低血糖を起こしにくいが、スルホニルウレア(SU)剤やインスリン製剤等の糖尿病治療薬と併用すると、低血糖のリスクが増加するおそれがある。
2 誤
本患者は、α−グルコシダーゼ阻害薬であるボクリボース錠を服用していることから、低血糖が起こった場合には、ブドウ糖を摂取する必要がある。
3 誤
アログリプチン安息香酸塩錠とボクリボース錠を併用すると、低血糖を発現するおそれがあるため、両薬剤は併用注意とされている。
4 正
アログリプチン安息香酸塩錠は、通常、成人では、1日1回服用することとなっているため、飲み忘れを防止するために、食後服用への変更も可能である。
問219 (物理・化学・生物)
糖尿病では血糖値の異常が起こる。グルコース代謝に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 血糖値は、筋肉から血中へグルコースが放出されることにより、維持される。
- インスリンは、血液から筋肉へのグルコースの取り込みを促進させ、血糖値を低下させる。
- 筋肉中で嫌気的代謝により生成した乳酸は、肝臓に運ばれてグルコースに変換される。
- 飢餓時には、肝臓でタンパク質が分解され、生成したアラニンが筋肉へ運ばれてグルコースに変換される。
- 筋肉でのグリコーゲンの合成と分解は、肝臓とは異なり、同一の酵素によって触媒される。
解答・解説
解答
2、3
解説
1 誤
血糖値は、肝臓や腎臓から血中へグルコースが放出されることにより、維持される。なお、筋肉ではグルコース6−ホスファターゼの活性が低いため、グリコーゲンより生じたグルコース6−リン酸からグルコースを生成することはできない。
2 正
インスリンは、インスリン受容体に結合し、チロシンキナーゼを活性化することにより筋細胞表面にグルコース輸送担体(GLUT4)を発現させ、血液から筋肉へのグルコースの取り込みを促進させ、血糖値を低下させる。
3 正
筋肉中で嫌気的代謝により生成した乳酸は、肝臓に運ばれて糖新生によりグルコースに変換させる。
4 誤
飢餓時には、筋肉でタンパク質が分解され、生成したアラニンが肝臓へ運ばれて糖新生によりグルコースに変換される。
5 誤
筋肉、肝臓でのグリコーゲンの合成と分解は、異なる酵素によって触媒される。
・グリコーゲン合成に関わる酵素:グリコーゲンシンターゼ
・グリコーゲン分解に関わる酵素:グリコーゲンホスホリラーゼ