双極子モーメントとは、分子内や物理系において電荷の偏りを定量的に表す指標である。
1. 定義
双極子モーメントは、正と負の電荷の間に生じる極性の強さと方向を示す。
数式では次のように表されます
双極子モーメント(ベクトル量)=q×d
q:正または負の電荷量(C: クーロン)
d:正電荷と負電荷の間の距離(m: メートル)
2. 意味
- 双極子モーメントが大きいほど、分子や系の電荷の偏りが大きく、極性が強いことを示す。
- 双極子モーメントがゼロの場合、電荷分布は対称的で極性がないことを意味する。
3. 化学における双極子モーメント
分子における双極子モーメントは、分子の極性を示す重要な性質である。
3.1 極性分子
- 極性分子とは、正負の電荷の重心が一致せず、双極子モーメントがゼロでない分子。
- 例: 水(H₂O)は酸素側に電子密度が偏り、強い双極子モーメントを有する。
3.2 無極性分子
- 無極性分子とは、電荷の重心が一致し、双極子モーメントがゼロの分子。
- 例: 二酸化炭素(CO₂)は直線構造で、双極子モーメントが打ち消し合いゼロとなる。
4. 双極子モーメントの応用
4.1 化学結合の性質の理解
- 結合の極性(イオン結合や共有結合の性質)を評価するのに役立つ。
4.2 分子間力の理解
- 極性分子間では、双極子-双極子相互作用(分子間力)が働く。
例: 水分子間の水素結合。
4.3 誘電特性
- 誘電率や分極率などの材料の特性評価に用いられる。
5. 双極子モーメントの例
| 分子 | 双極子モーメント(D) | 特徴 |
|---|---|---|
| 水 (H₂O) | 1.85 | 極性分子 |
| 塩化水素 (HCl) | 1.05 | 極性分子 |
| アンモニア (NH₃) | 1.42 | 極性分子 |
| 二酸化炭素 (CO₂) | 0.0 | 無極性分子(打ち消し) |




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