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乳酸(Lactic Acid)

乳酸(Lactic Acid)は、生体内で重要な役割を果たす有機酸の一つであり、エネルギー代謝や運動生理学に深く関与している。嫌気的条件下での糖分解(解糖系)において生成され、体内の酸塩基バランスの維持やエネルギー供給に寄与する。

1. 基本情報

  • 化学式: C₃H₆O₃
  • 構造式: CH₃–CH(OH)–COOH
    • 1つのカルボキシル基(COOH)と1つのヒドロキシル基(OH)を持つα-ヒドロキシ酸。
  • 性質:
    • 水に溶けやすく、弱酸性を示す。
    • 乳酸には光学異性体が存在し、L体(L-乳酸)とD体(D-乳酸)の2種類があります。

2. 生成と代謝

2.1 生成

  • 乳酸は、解糖系の最終産物であるピルビン酸が乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の働きで還元されることによって生成される
    ピルビン酸+NADH+H→乳酸+NAD
    \text{ピルビン酸 + NADH + H⁺ → 乳酸 + NAD⁺} 

2.2 代謝の状況

  • 嫌気的条件(酸素不足、激しい運動時):
    筋細胞でエネルギーが必要なときに、酸素供給が追いつかない場合、解糖系でATPを生成し、乳酸が産生される。
  • 好気的条件(酸素豊富):
    一部の乳酸は肝臓でグルコースに再合成される(糖新生)か、ミトコンドリアで再酸化されてエネルギー源として利用される。

3. 乳酸の役割

  1. エネルギー供給
    乳酸は、肝臓での「コリ回路(Cori cycle)」を通じてグルコースに変換され、再利用される。これにより、筋肉のエネルギー供給が効率的に行われる。 乳酸 → 肝臓 → グルコース → 筋肉\text{乳酸 → 肝臓 → グルコース → 筋肉} 
  2. 酸塩基平衡の維持
    乳酸が過剰に蓄積すると血液のpHが低下し、乳酸アシドーシスを引き起こす可能性がある。このため、体内では乳酸を速やかに処理する仕組みが備わっている。

4. 臨床的意義

  1. 乳酸アシドーシス
    • 酸素供給不足(心肺停止や重度の運動)や糖尿病、腎機能障害により乳酸が蓄積すると、体液が酸性化する乳酸アシドーシスを引き起こす。
    • 重症の場合、生命の危険を伴うため迅速な治療が必要である。
  2. 運動と乳酸
    • 激しい運動中に乳酸が筋肉に蓄積することで「筋疲労」が生じるとされているが、実際には乳酸自体が疲労物質ではなく、重要なエネルギー源として働く。

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