メタノール(Methanol)は、最も簡単な構造を持つアルコールであり、化学式は CH₃OH である。無色透明で、揮発性が高く、特徴的なアルコール臭を有する液体である。工業用途をはじめ多岐にわたる分野で利用されていますが、人体には強い毒性があり、取り扱いには注意が必要である。
1. メタノールの基本的な性質
- 化学式: CH₃OH
- モル質量: 約 32.04 g/mol
- 物理的性質:
- 沸点: 約 64.7℃
- 融点: 約 -97.6℃
- 水やエタノールなどに非常に良く溶ける。
- 化学的性質:
- 燃焼すると二酸化炭素(CO₂)と水(H₂O)を生成。
- 酸化されるとホルムアルデヒドやギ酸になる。
2. メタノールの用途
- 工業用途:
- 溶媒: 化学反応の媒体や塗料の希釈剤として使用。
- 燃料: 再生可能エネルギーの一環としてメタノール燃料が注目されている。
- 原料:
- ホルムアルデヒド、酢酸、メチルエステルなどの製造。
- 合成樹脂や接着剤の原料。
- エネルギー分野:
- 燃料電池の燃料(直接メタノール燃料電池)。
- 研究・実験:
- 試薬として化学研究で使用。
- その他:
- 窓ガラスの洗浄液や凍結防止剤として利用されることがある。
3. メタノールの毒性
3.1 中毒症状
- 摂取や吸入、皮膚吸収により中毒を引き起こす。
- 主にホルムアルデヒドやギ酸への代謝が原因で毒性が発生する。
- 急性中毒症状:
- 頭痛、吐き気、腹痛、めまいなど。
- 視覚障害(失明を含む)が特徴的な症状。
- 重篤な場合、昏睡や死亡に至ることもある。
3.2 毒性メカニズム
- メタノールは肝臓でアルコールデヒドロゲナーゼによってホルムアルデヒドに変換され、さらにギ酸に代謝されます。
- ギ酸は体内で代謝されにくく、酸性化や細胞機能の阻害を引き起こす。
3.3 治療法
- エタノール投与: アルコールデヒドロゲナーゼと競合させ、メタノールの代謝を遅らせる。
- ホメピゾール: メタノールの代謝を阻害する。
- 透析: 血液中のメタノールや代謝産物を除去。
4. メタノールとエタノールの違い
- メタノール:
- 毒性が高く、飲用不可。
- 主に工業用。
- エタノール:
- 飲用アルコール(ただし、適量に限る)。
- 消毒液や溶媒としても使用。
5. メタノールの環境影響
- 揮発性が高く、土壌や水中で拡散する可能性がある。
- 生分解性が高く、環境中で比較的早く分解されるが、高濃度では水生生物に毒性を示すことがある。
6. 安全な取り扱い
- 揮発性と毒性があるため、適切な保護具(手袋、マスク、ゴーグルなど)を着用。
- 換気の良い場所で使用。
- 誤飲や皮膚接触を避ける。
- 火気厳禁(引火性が高い)。




コメント