ピルビン酸(Pyruvic Acid)は、生体内の代謝において中心的な役割を果たす有機酸で、解糖系の最終産物の一つである。エネルギー産生やさまざまな代謝経路の中間体として機能し、炭素代謝のハブとして重要視されている。
1. 基本情報
- 化学式: C₃H₄O₃
- 構造式: CH₃–CO–COOH
- メチル基(CH₃)、ケトン基(CO)、カルボン酸基(COOH)を持つ分子構造。
- 性質:
- 無色の液体または固体。
- 水やエタノールによく溶ける。
2. 生成と代謝経路
2.1 生成
- 解糖系: グルコースが10段階の酵素反応を経て分解され、ピルビン酸が生成されます。
グルコース→→→2×ピルビン酸+2ATP+2NADH
2.2 代謝の分岐点
ピルビン酸は、細胞のエネルギー状態や酸素の有無に応じて、以下のような代謝経路に進む:
- 嫌気的条件(酸素不足):
- 乳酸発酵(動物細胞):
ピルビン酸は乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の作用で乳酸に変換されます。
ピルビン酸+NADH→乳酸+NAD+
- 乳酸発酵(動物細胞):
- 好気的条件(酸素豊富):
- アセチルCoAへの変換:
ミトコンドリア内でピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDH)の作用によりアセチルCoAに変換され、クエン酸回路に入ります。
- アセチルCoAへの変換:
- 糖新生:
- ピルビン酸はオキサロ酢酸を経てグルコース合成に利用される(主に肝臓で起こる)。
- アミノ酸代謝:
- ピルビン酸はアラニンなどのアミノ酸の前駆体となる。
3. 生理学的役割
- エネルギー産生:
- 解糖系やクエン酸回路において、ATPやNADHの生成に寄与する。
- 物質の合成と分解のハブ:
- 炭素骨格を供給し、脂質、アミノ酸、糖などの合成や分解に関与する。
4. 臨床的意義
- 乳酸アシドーシス:
- 酸素不足やミトコンドリア機能障害により、ピルビン酸が乳酸に過剰に変換され、血液が酸性に傾く。
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