◉名称、化学構造
名称:ジゴキシン
◉代表的な製剤
ジゴシン錠/散
◉分類
ジギタリス配糖体製剤
◉効能・効果
- 次の疾患に基づくうっ血性心不全
(肺水腫、心臓喘息等を含む)先天性心疾患、弁膜疾患、高血圧症、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症等)、肺性心(肺血栓・塞栓症、肺気腫、肺線維症等によるもの)、その他の心疾患(心膜炎、心筋疾患等)、腎疾患、甲状腺機能亢進症ならびに低下症等 - 心房細動・粗動による頻脈
- 発作性上室性頻拍
- 次の際における心不全及び各種頻脈の予防と治療
手術、急性熱性疾患、出産、ショック、急性中毒
◉薬理作用
- Na+,K+-ATPaseを阻害することにより、細胞内のNa+が細胞外に排出されにくくなると、Na+-Ca2+交換系を介して細胞内のCa2+の濃度が上昇することで心収縮力が増大する
(陽性変力作用) - 迷走神経刺激することにより心拍数が減少する
(陰性変時作用) - 刺激伝導系の興奮速度を低下させるとともに、房室結節の不応期を延長させる
(陰性変伝導作用)
- 活動電位が発生し、Ca2+が細胞内に流入する
- 細胞内Ca2+濃度の上昇により、小胞体からCa2+が放出される
- 細胞内のCa2+がアクチンフィラメント上のトロポニンCと結合し、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントに架橋が形成され、筋収縮が認められる
- Na+,K+-ATPaseにより、細胞内のNa+が細胞外に放出される
- 細胞内のNa+濃度が低下し、Na+-Ca2+交換系の機能が亢進することで細胞内のCa2+が低下するとともに筋肉が弛緩する
【心臓細胞の収縮機構】
◉使用する際の注意
- 本剤を投与する場合には観察を十分に行い、過去2~3週間以内にジギタリス剤又はその他の強心配糖体が投与されているか否かを確認したのち、慎重に投与量を決定する。
- 本剤の至適投与量は患者により個人差があるので、少量から投与を開始し、観察を十分に行い投与量を調節する。
- 本剤は種々の薬剤との相互作用が報告されているが、可能性のあるすべての組み合わせについて検討されているわけではないので、他剤と併用したり、本剤又は他剤を休薬する場合は本剤の血中濃度の推移、自覚症状、心電図等に注意し、慎重に投与する。
- ジギタリス中毒の症状(悪心・嘔吐、不整脈等)があらわれることがあるので、消化器・神経系自覚症状、心電図、血中濃度測定等必要に応じ観察するとともに腎機能、血清電解質(カリウム、マグネシウム、カルシウム)、甲状腺機能等の誘因に注意する
- 急性心筋梗塞、心室性期外収縮、心膜炎、WPW症候群、電解質異常の患者に使用する際、注意する必要がある
- 甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症の患者では血中濃度が変動しやすいため、投与量を調節する必要がある
- 腎機能障害患者では、排泄が低下し、中毒を起こすことがある
◉相互作用
- インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム
本剤の腎排泄が抑制され、血中濃度が上昇することがある - トラゾドン
本剤の血中濃度が上昇することがある - スキサメトニウム塩化物水和物
スキサメトニウムの血中カリウム増加作用、カテコールアミン放出により不整脈を起こすことがある - 抗コリン剤
腸管運動が抑制され滞留時間が延長されるため、血中濃度が上昇することがある - 不整脈用剤
ジギタリス中毒の症状(悪心、嘔吐、不整脈)が現れることがある - β受容体遮断薬
薬力学的相互作用により伝導抑制の増強、徐脈の誘発が現れることがある - チアジド系利尿薬、ループ利尿薬
ジギタリス中毒の症状(悪心、嘔吐、不整脈)が現れることがある - スピロノラクトン
腎排泄が抑制され、血中濃度が上昇する - トルバプタン
P糖タンパク質を介した本剤の排泄抑制により血中濃度が上昇することがある - 血圧降下剤
薬力学的相互作用により、伝導抑制の増強、徐脈の誘発が現れることがある - アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬
本剤の血中濃度が上昇し、ジギタリス中毒の症状(悪心、嘔吐、不整脈)が現れることがある - カルシウム拮抗剤
(ベラパミル、ジルチアゼム、ニフェジピンなど)
腎排泄が抑制され、本剤の血中濃度が上昇し、ジギタリス中毒の症状(悪心、嘔吐、不整脈)が現れることがある - アトルバスタチン
P糖タンパク質を介した本剤の排泄抑制により血中濃度が上昇することがある - ポリスチレンスルホン酸塩
血中カリウム値の低下によりジギタリス中毒の症状(悪心、嘔吐、不整脈)が現れることがある - 交感神経刺激剤
薬力学的相互作用により不整脈が現れることがある - プロトンポンプ阻害薬
胃酸分泌抑制作用により本剤の加水分解が抑制され、血中濃度が上昇することがある - 副腎皮質ホルモン剤
副腎皮質ホルモン剤により低カリウム血症が起こり、ジギタリス中毒の症状(悪心、嘔吐、不整脈)が現れることがある - ビタミンD製剤
血中カルシウム濃度が上昇することで、ジギタリス中毒の症状(悪心、嘔吐、不整脈)が現れることがある - カルシウム製剤
血中カルシウム濃度が上昇することで、ジギタリス中毒の症状(悪心、嘔吐、不整脈)が現れることがある - ジスルフィラム
ジスルフィラム-アルコール反応時に過呼吸により血中カリウム濃度が低下し、ジギタリス中毒の症状(悪心、嘔吐、不整脈)が現れることがある - シクロスポリン
本剤の腎障害が抑制され、血中濃度が上昇することがある - エリスロマイシン、クラリスロマイシン、テトラサイクリン
腸内細菌叢への影響により本剤の代謝抑制、P糖蛋白質を介した本剤の排泄抑制により血中濃度が上昇することがある - アジスロマイシン
P糖蛋白質を介した本剤の輸送が阻害されることがある - アムホテリシンB、エンビオマイシン
血中カリウム値が低下し、ジギタリス中毒の症状(悪心、嘔吐、不整脈)が現れることがある - HIVプロテアーゼ阻害薬
P糖蛋白質を介した本剤の輸送が阻害されることがある - エトラビリン
P糖蛋白質を介した本剤の輸送が阻害されることがある - レジパスビル・ソホスブビル
レジパスビルのP糖蛋白質阻害作用により本剤の血中濃度が上昇することがある - イトラコナゾール、スルファメトキサゾール・トリメトプリム
本剤の腎排泄が抑制され、血中濃度が上昇することがある - チアマゾール、プロピルチオウラシル
甲状腺機能亢進の改善に伴いクリアランスが正常になるため、本剤の血中濃度が上昇するとの報告がある - ベムラフェニブ
P糖蛋白質を介した本剤の輸送が阻害されることがある - カルバマゼピン
本剤の血中濃度が低下することがある - コレスチラミン、コレスチミド
消化管内での吸着により本剤の吸収を阻害し、血中濃度が低下するとの報告がある - 制酸剤、スクラルファート水和物
消化管内での吸着により本剤の吸収を阻害し、血中濃度が低下するとの報告がある - リファンピシン
P糖蛋白質、肝薬物代謝酵素の誘導作用により、本剤の血中濃度が低下するとの報告がある - サルファ剤
本剤の吸収が阻害され、血中濃度が低下するとの報告がある - レボチロキシン、リオチロニン
甲状腺機能低下の改善に伴いクリアランスが正常になるため、本剤の血中濃度が低下するとの報告がある - アカルボース、ミグリトール
本剤の血中濃度の低下が認められたとの報告がある - セイヨウオトギリソウ含有食品
本剤の排泄が促進され、血中濃度が低下するおそれがある - ブピバカイン塩酸塩水和物
ブピバカイン塩酸塩の副作用を増強することがある - ヘパリン
ヘパリンの作用を減弱するおそれがある - スルピリド、メトクロプラミド、ドンペリドン
ジギタリス中毒の症状(悪心・嘔吐、食欲不振等)を不顕性化するおそれがある
◉副作用
◉主な副作用
発疹、蕁麻疹、紫斑、浮腫など
◉重大な副作用
・ジギタリス中毒(高度の徐脈、二段脈、多源性心室性期外収縮、発作性心房性頻拍、房室ブロック、心室性頻拍症、心室細動などの不整脈)
[脈がひどく遅くなる、脈が速くなる、脈がとぶ、脈が乱れる、息切れ、急に意識がなくなる、胸が締めつけられる、胸が痛い]
・非閉塞性腸間膜虚血
[急激な腹痛、便に血が混じる、発熱、吐き気、嘔吐]
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