グルカゴン(Glucagon)は、膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞から分泌されるホルモンで、血糖値を上昇させる働きを有する。インスリンとは対照的に、低血糖状態での血糖値維持を主な役割とし、主に肝臓に作用してエネルギー供給を促進する。
1. 基本情報
- ホルモン分類: ペプチドホルモン
- 生成部位: 膵臓のランゲルハンス島α細胞
- 標的臓器: 主に肝臓
2. 主な作用
グルカゴンは、低血糖状態で血糖値を上昇させるために以下の作用を発揮する
2.1 糖新生の促進
- 肝臓での糖新生(アミノ酸や乳酸など非糖物質からグルコースを合成する過程)を活性化し、血糖値を上昇させる。
2.2 グリコーゲン分解の促進
- 肝臓内のグリコーゲン分解を促進し、グリコーゲンをグルコースに変換して血液中に放出する。
2.3 脂肪分解の促進
- 脂肪細胞に作用して脂肪分解を促進し、脂肪酸を遊離させてエネルギー源として利用する。
3. 分泌の調節
グルカゴンの分泌は、主に血糖値に応じて調節される。
3.1 促進因子
- 低血糖: 血糖値が低下するとグルカゴン分泌が増加する。
- 運動: 激しい運動中や空腹時に分泌が促進される。
- アミノ酸の増加: 血中アミノ酸濃度の上昇がグルカゴン分泌を刺激する。
3.2 抑制因子
- 高血糖: 血糖値が正常または高いときは分泌が抑制される。
- ソマトスタチン: 膵臓から分泌されるホルモンで、グルカゴン分泌を抑制する。
4. 病態との関連
4.1 糖尿病
- 1型糖尿病や2型糖尿病では、グルカゴンとインスリンのバランスが崩れ、血糖調節が困難になる場合がある。
4.2 低血糖症
- グルカゴン分泌の不足は、低血糖症を引き起こす可能性がある。
5. 医療での利用
5.1 低血糖の治療
- 重度の低血糖状態において、緊急治療薬としてグルカゴン製剤が使用される。注射または点鼻製剤として投与され、肝臓でのグリコーゲン分解を促進して血糖値を回復させる。
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