クエン酸回路(TCA回路、クレブス回路、Citric Acid Cycle)は、生体内のエネルギー代謝において中心的な役割を果たす代謝経路である。細胞のミトコンドリア内で行われ、糖質、脂質、タンパク質から供給されるアセチルCoAを分解してエネルギーを生成します。この過程で、ATP、NADH、FADH₂などの高エネルギー分子を産生し、生物の生命活動を支える基盤を形成している。
1. 基本概要
- 場所: 真核細胞ではミトコンドリア内、原核細胞では細胞質で行われる。
- 目的:
- アセチルCoAを二酸化炭素(CO₂)に分解する。
- NADHとFADH₂を生成し、電子伝達系でのATP産生に利用する。
2. 反応の流れ
クエン酸回路は、以下の8つの反応で構成されます:
- アセチルCoAとオキサロ酢酸の縮合
- クエン酸の異性化
- クエン酸がイソクエン酸に変換。
- 酵素: アコニターゼ
- イソクエン酸の酸化的脱炭酸
- イソクエン酸が酸化され、α-ケトグルタル酸(5炭素)とCO₂を生成。
- 酵素: イソクエン酸デヒドロゲナーゼ
- α-ケトグルタル酸の酸化的脱炭酸
- α-ケトグルタル酸が酸化され、スクシニルCoA(4炭素)とCO₂を生成。
- 酵素: α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ
- スクシニルCoAの基質レベルのリン酸化
- スクシニルCoAがスクシン酸(4炭素)に変換される過程でGTPまたはATPを生成。
- 酵素: スクシニルCoAシンターゼ
- コハク酸の酸化
- コハク酸がフマル酸(4炭素)に変換され、FADH₂を生成。
- 酵素: コハク酸デヒドロゲナーゼ
- フマル酸の水和
- フマル酸に水が付加され、リンゴ酸(4炭素)を生成。
- 酵素: フマラーゼ
- リンゴ酸の酸化
- リンゴ酸がオキサロ酢酸に変換され、NADHを生成。
- 酵素: リンゴ酸デヒドロゲナーゼ
この反応サイクルは再びオキサロ酢酸を生成し、新たなアセチルCoAを受け入れる準備を整える。
3. クエン酸回路の産物
1回のサイクルで以下が生成されます:
- 3分子のNADH
- 1分子のFADH₂
- 1分子のATPまたはGTP(基質レベルのリン酸化)
- 2分子のCO₂
NADHとFADH₂は電子伝達系に送られ、酸化的リン酸化により大量のATPを生成する。
4. 生理学的意義
- エネルギー産生:
クエン酸回路を通じて、細胞は効率的にエネルギー(ATP)を獲得する。 - 中間体の供給:
- アミノ酸、脂肪酸、グルコースの合成に必要な中間体を提供する。
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