キラーT細胞は、免疫系の一部であるTリンパ球の一種であり、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞などの異常な細胞を直接破壊する役割を果たす細胞性免疫の中心的な存在である。
特徴
- CD8分子の発現
キラーT細胞は細胞表面にCD8タンパク質を発現しており、「CD8陽性T細胞」とも呼ばれる。 - 抗原特異性
感染細胞や腫瘍細胞が提示するMHCクラスI分子上の抗原ペプチドを、T細胞受容体(TCR)を介して特異的に認識する。
主な機能
- 感染細胞の破壊
- ウイルス感染細胞や細胞内寄生菌に感染した細胞を破壊することで、感染の拡大を防ぐ。
- 腫瘍細胞の排除
- 異常な腫瘍細胞を直接攻撃し、がん細胞の増殖を抑制する。
- 細胞死の誘導
- 感染細胞や腫瘍細胞に対して、アポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘導する。
キラーT細胞の活性化
キラーT細胞は、以下の手順で活性化される:
- MHCクラスI分子の認識
- 感染細胞や腫瘍細胞が提示するMHCクラスI分子上の抗原ペプチドをTCRが特異的に認識する。
- 共刺激分子のシグナル
- 樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)による共刺激分子(例: CD80/CD86)のシグナルが必要である。
- ヘルパーT細胞の補助(場合による)
- ヘルパーT細胞が分泌するサイトカイン(例: IL-2)が、キラーT細胞の活性化と増殖を助ける。
殺傷のメカニズム
キラーT細胞は、以下の方法で標的細胞を破壊する:
- パーフォリンとグランザイムの分泌
- パーフォリンは標的細胞膜に穴をあけ、グランザイムを細胞内に送り込む。
- グランザイムは細胞のアポトーシスを誘導する。
- Fas-FasL経路
- キラーT細胞のFasリガンド(FasL)が標的細胞のFas分子と結合し、アポトーシスを誘導する。
役割と重要性
- 感染防御
- ウイルス感染細胞を効率的に除去し、感染の拡大を抑える。
- 腫瘍免疫
- がん細胞を認識し、腫瘍形成を阻止する。
- 免疫記憶
- 一部のキラーT細胞は記憶T細胞として残り、再感染時に迅速な免疫応答を可能にする。
関連疾患
- 免疫不全
- キラーT細胞の機能低下は、ウイルス感染症やがんに対する防御力を低下させる。
- 自己免疫疾患
- 誤って正常な細胞を攻撃する場合、自己免疫疾患(例: 1型糖尿病、自己免疫性肝炎)の原因となる。
- 拒絶反応
- 移植された臓器や組織を異物として攻撃し、拒絶反応を引き起こす。
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