エンベロープ(envelope)は、ウイルスの構造の一部で、ウイルス粒子の外側を覆う脂質二重膜のことである。エンベロープにより、ウイルスは自身の核酸やタンパク質を外部環境から保護し、宿主細胞に感染するための重要な役割を果たす。
エンベロープの特徴
- 構造
- エンベロープは主に脂質二重膜で構成され、その中にウイルス由来のタンパク質(例: スパイクタンパク質)が埋め込まれている。
- スパイクタンパク質やヘマグルチニンタンパク質などの表面タンパク質は、宿主細胞の特定の受容体と結合して感染を開始に関与する。
- 脆弱性
- エンベロープは脂質で構成されているため、アルコールや界面活性剤(石鹸など)によって容易に破壊される。これがエンベロープを持つウイルスに対する効果的な消毒方法となっている。
エンベロープを持つウイルスの例
- コロナウイルス(SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoVなど)
- インフルエンザウイルス
- エイズウイルス(HIV)
- ヘルペスウイルス
- 狂犬病ウイルス
エンベロープの役割
- 感染の促進
- 宿主細胞への侵入に重要な役割を果たす。ウイルス表面のスパイクタンパク質が宿主細胞の特定の受容体に結合し、細胞膜と融合して感染を成立させる。
- 環境適応
- ウイルスが宿主間で移動する際、環境中での保護機能を果たす。ただし、エンベロープは環境耐性が低く、アルコールや高温によって容易に失活する。
エンベロープを持たないウイルスとの比較
エンベロープを持たないウイルスは「非エンベロープウイルス」と呼ばれます。非エンベロープウイルスはエンベロープの代わりにカプシド(タンパク質の殻)のみで構成されており、環境耐性が高い特徴を有する。たとえば、ポリオウイルスやノロウイルスは非エンベロープウイルスの代表例である。
エンベロープの消毒と感染対策
- アルコール消毒: エンベロープを持つウイルスは脂質膜が破壊されやすいため、70%以上のエタノールを含む消毒剤が効果的である。
- 石鹸と水: 界面活性剤が脂質膜を破壊するため、手洗いが感染対策として推奨される。
- 紫外線や熱: エンベロープは高温や紫外線にも弱いため、これらを利用した消毒も効果的である。





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