MHCクラスI分子は、ほぼすべての有核細胞の表面に発現している分子であり、細胞内で産生された抗原(特に内因性抗原)を提示する役割を果たす。これは主に、ウイルス感染細胞やがん細胞などの異常を認識し、細胞傷害性T細胞(CD8陽性T細胞)による免疫応答を誘導するために重要である。
MHCクラスI分子の構造
MHCクラスI分子は以下の2つの主要な構成要素からなる:
- 重鎖(α鎖):
- ヘテロ二量体構造の一部で、膜貫通型のタンパク質。
- α1、α2、α3の3つのドメインを有する。
- 抗原ペプチドを結合する部位(ペプチド結合溝)は、α1とα2ドメインによって形成される。
- β2ミクログロブリン:
- α鎖と非共有結合で連結する小型タンパク質。
- 安定なMHCクラスI分子の構造維持に必要である。
MHCクラスI分子の機能
- 内因性抗原の提示:
- MHCクラスI分子は、細胞内で産生されたタンパク質(例:ウイルス由来タンパク質やがん細胞で異常に産生されたタンパク質)がプロテアソームで分解されて生成される短いペプチド(約8~10アミノ酸)を細胞表面に提示する。
- この抗原ペプチド-MHCクラスI複合体は、細胞傷害性T細胞(CTL)のT細胞受容体(TCR)によって認識される。
- 免疫応答の誘導:
- CTLは異常ペプチドを提示している細胞を認識し、これを標的としてアポトーシス(細胞死)を誘導する。
- これにより、ウイルス感染細胞やがん細胞の除去が可能になる。
- 自己と非自己の区別:
- 正常な細胞も、MHCクラスI分子を介して通常の自己抗原を提示している。これにより、免疫系は「自己」と「非自己」を区別し、正常な細胞を攻撃しないように調節する。
MHCクラスI分子の発現と制御
- 発現細胞:
- ほぼすべての有核細胞に発現している。
- 赤血球は例外的にMHCクラスI分子を発現しない。
MHCクラスI分子と疾患
- ウイルス感染:
- ウイルスは感染細胞内で自身のタンパク質を産生するため、MHCクラスI分子を介して提示される。
- CTLが感染細胞を破壊することで、ウイルスの増殖が抑えられる。
- がん免疫:
- がん細胞で異常なタンパク質が産生されると、それがMHCクラスI分子を介して提示され、CTLによって認識される。
- 移植免疫:
- MHCクラスI分子は個人ごとに多型性が高いため、臓器移植では他人のMHCクラスI分子が「非自己」として認識され、拒絶反応が起きることがある。
MHCクラスI分子と関連する免疫系の細胞
- 細胞傷害性T細胞(CTL):
- CD8陽性T細胞がMHCクラスI分子を介して抗原を認識する主要な細胞である。
- ナチュラルキラー(NK)細胞:
- MHCクラスI分子の発現が低下している細胞(例:ウイルス感染細胞やがん細胞)を認識し、破壊する能力を有する。




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