1骨髄抑制
【概念】
抗がん薬の多くにみられる代表的な副作用のひとつであり、赤血球の減少による貧血、白血球の減少よる易感染状態、血小板の減少による出血、といった血球減少に関連する症状を引き起こす。
【対策】
特に白血球の減少による感染症のリスクに注意が必要である。
以下のような状態では迅速な対応が求められる。
好中球数が1,000/μL未満かつ口腔内温が38℃以上、または好中球数が500/μL未満
このような場合、G-CSF製剤(フィルグラスチム、レノグラスチム、ナルトグラスチム)が有効である。さらに最近では、G-CSFの効果を持続させるために、フィルグラスチムの末端にポリエチレングリコール(PEG)を結合させたペグフィルグラスチムが用いられる。
2悪心・嘔吐
【概要】
悪心・嘔吐は、延髄にある嘔吐中枢(vomiting center: VC)が刺激されることで引き起こされる。VCの活性化には、上部消化管の刺激や、延髄のCTZ(化学受容器引金帯)を介した直接または間接的な刺激が関与する。
【嘔吐が起こるメカニズム】
抗がん剤や消化管の刺激、精神的な刺激などがCTZを介してVCに信号を送り、悪心・嘔吐を引き起こす。
消化管の刺激は迷走神経や交感神経を通してVCに伝わる。
精神的な要因は大脳皮質を介してVCに影響を与える。
3 下痢
【概念】
抗がん剤の副作用として下痢がみられることがある。主な原因薬剤にはイリノテカン、フルオロウラシル、エトポシドなどがある。発症のタイミングによって、早期に生じる下痢(コリン作動性)と、やや遅れて現れる下痢(腸管粘膜障害による)に分類される。
【対策】
下痢に対しては、抗コリン薬やロペラミドなどの止瀉薬が使用される。また、下痢が続くと脱水のリスクが高まるため、スポーツドリンクなどによる水分補給も重要である。
4 口内炎
【概念】
フルオロウラシル、メトトレキサート、ドセタキセル、パクリタキセルといった抗がん剤によって、口内の粘膜が障害されやすくなる。主な症状には、触ると痛い・出血・口内の灼熱感・乾燥に加え、口腔粘膜の赤み・腫れ・開口障害・発音障害・嚥下障害・味覚障害などがある。
【対策】
口腔内の衛生管理として、ブラッシングやうがい薬を用いる。
硬いもの・熱いものは避けるなど、刺激を抑える食事に切り替える。
抗がん剤を投与する際に口の中を冷やす(例:氷片を含む)ことで、血管を収縮させ粘膜への薬剤の移行を抑える。
アロプリノール含嗽剤(うがい薬)の使用も効果的である。
5 泌尿器障害
【概念】
シスプラチン、シクロホスファミド、イホスファミド、マイトマイシンC、ブレオマイシン、メトトレキサートなどの薬剤で起こる。特にシクロホスファミドやイホスファミドでは、代謝産物であるアクロレインによる出血性膀胱炎も報告されている。
【対策】
シスプラチンによる腎障害を防ぐために、投与の前後で十分な輸液と利尿薬の併用(ハイドレーション)を行い、尿量の確保を徹底することが大切である。また、シクロホスファミドの代謝物であるアクロレインにより起こる出血性膀胱炎に対しては、解毒薬としてメスナが有効である。
6 肺障害
【概念】
多くの抗悪性腫瘍薬は、間質性肺炎などの肺障害を引き起こす可能性がある。代表的な原因薬には、ゲフィチニブ(EGFRチロシンキナーゼ阻害薬)、ブレオマイシン、メトトレキサートなどがある。
【対策】
間質性肺炎に対しては、メチルプレドニゾロン1,000mgを3日間連続投与するステロイドパルス療法が行われる。
7 心毒性
【概念】
細胞障害作用のある抗がん剤のうち、ドキソルビシンなどのアントラサイクリン系薬、シクロホスファミド、フルオロウラシル、トラスツズマブなどが心毒性の原因として知られる。
【対策】
薬剤によって生じる不整脈、心不全、虚血性心疾患などに対し、症状に応じた適切な治療が必要である。
8 インフュージョンリアクション
【概念】
トラスツズマブやリツキシマブなどの抗体製剤の投与時に、単球やリンパ球からTNF-αやIL-6などのサイトカイン放出が誘導され、アレルギー反応様の急性症状が発生する。
【対策】
予防として、ヒスタミンH₁受容体遮断薬、解熱鎮痛薬、副腎皮質ステロイド薬(例:デキサメタゾン)などを事前に投与する。
9 皮膚障害
【概念】
原因となる薬剤には、ブスルファン、ダカルバジン、シクロホスファミド、シタラビン、カペシタビン、ソラフェニブ、セツキシマブ、パニツムマブなどがある。中でもカペシタビンやソラフェニブでは手足症候群が代表的な副作用であり、しびれや痛み、発赤、紅斑、色素沈着などが現れる。また、セツキシマブやパニツムマブではざ瘡様皮疹、皮膚乾燥、爪囲炎などの皮膚症状が出る。
【対策】
皮膚症状の予防では、保湿などのスキンケアが重要となる。ざ瘡様皮疹には、副腎皮質ステロイド外用薬やミノサイクリン、クラリスロマイシンなどの内服抗菌薬が用いられる。
また、手足症候群にはヘパリン類似物質外用薬、ビタミンA軟膏、白色ワセリンなどが処方される。
10 腫瘍崩壊症候群
【概念】
抗悪性腫瘍薬の投与時に発生しやすい重篤な病態で、特に急性リンパ性白血病や悪性リンパ腫などの血液がんに多くみられる。がん細胞が急速に壊れることで、細胞内の核酸、カリウム、リン酸などが血中に放出され、高尿酸血症、高カリウム血症、高リン血症などを引き起こす。
また、これらにより低カルシウム血症、代謝性アシドーシス、急性腎不全などを合併する可能性がある。
【対策】
予防の基本は、十分な水分補給と尿アルカリ化による尿酸結晶の抑制である。
また、尿酸合成阻害薬であるアロプリノールや、尿酸分解酵素製剤であるラスブリカーゼの予防的投与も有効とされる。







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