鉄欠乏性貧血は、体内の鉄が不足することによって赤血球の産生が低下し、組織への酸素供給が不足する貧血である。特に女性や成長期の子ども、妊婦、高齢者に多くみられる。
1. 原因
鉄欠乏性貧血の主な原因は、鉄の摂取不足、鉄の需要増加、鉄の喪失増加の3つである。
① 鉄の摂取不足
- 偏った食事(野菜中心の食生活、極端なダイエット)
- 吸収障害(胃切除後、小腸疾患など)
② 鉄の需要増加
- 成長期の子どもや思春期の女性(体の発達に伴う鉄の必要量増加)
- 妊娠・授乳期(胎児・乳児への鉄供給が必要)
③ 鉄の喪失増加
- 月経過多(特に若年女性に多い)
- 消化管出血(胃潰瘍、十二指腸潰瘍、大腸がん、痔など)
- 慢性的な少量出血(ピロリ菌感染やNSAIDs使用による胃腸障害)
2. 症状
鉄欠乏性貧血は、酸素供給の低下により以下のような症状を引き起こす。
① 全身症状
- 倦怠感・疲れやすい
- 動悸・息切れ(階段を上るとすぐ息切れする)
- めまい・立ちくらみ
- 頭痛
② 皮膚・粘膜の症状
- 皮膚の蒼白
- 爪の変形(スプーン状爪:爪が反り返る)
- 口角炎、舌炎(口の端が切れる、舌が赤くなる)
③ 神経・消化器症状
- 異食症(氷や土、でんぷんを食べたくなる)
- 集中力低下
3. 診断
① 血液検査
- ヘモグロビン(Hb)↓(男性:13g/dL未満、女性:12g/dL未満)
- ヘマトクリット(Ht)↓
- 平均赤血球容積(MCV)↓(小球性低色素性貧血:80fL未満)
- 血清鉄(Fe)↓
- フェリチン(貯蔵鉄)↓(鉄欠乏を反映する最も重要な指標)
- 総鉄結合能(TIBC)↑(鉄を運ぶトランスフェリンが増加)
② 原因検索
- 消化管出血の有無を確認(胃カメラ・大腸内視鏡検査)
- 月経過多の有無を問診
4. 治療
① 鉄の補充
- 経口鉄剤(第一選択)
- 硫酸鉄(フェロミア®)、フマル酸第一鉄(フェログラデュメット®)
- 服用方法:食前または食後に服用(胃腸障害を避けるため食後推奨)
- 副作用:悪心、便秘、黒色便
- 静脈鉄剤(経口鉄剤が無効または服用困難な場合)
- 含糖酸化鉄(フェジン®)
- 副作用:アナフィラキシーリスクがあるため慎重投与
② 食事療法
鉄を多く含む食品を積極的に摂取することが推奨される。
【鉄を多く含む食品】
- ヘム鉄(吸収率が高い):赤身の肉、レバー、魚(カツオ、マグロ)
- 非ヘム鉄(吸収率が低い):ほうれん草、大豆、卵黄
- 鉄の吸収を助ける栄養素
- ビタミンC(柑橘類、ピーマン)
- 動物性たんぱく質(肉、魚)
- 鉄の吸収を妨げる成分を避ける
- タンニン(お茶、コーヒー)
- カルシウム(牛乳、大量の乳製品)
③ 原因疾患の治療
- 月経過多の場合:ホルモン療法(低用量ピル、黄体ホルモン)
- 消化管出血の場合:ピロリ菌除菌、潰瘍治療、がん検査




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