破骨細胞は、骨組織のリモデリングにおいて重要な役割を果たす巨大な多核細胞であり、骨吸収(骨を分解する過程)を担う。骨の成長、修復、代謝バランスを維持する上で、骨芽細胞(骨形成を行う細胞)と協調して働いている。
特徴
- 細胞の起源
- 破骨細胞は、単球・マクロファージ系の前駆細胞が分化して形成される。
- これは造血幹細胞から分化したものであり、免疫系に属する細胞群と密接な関係がある。
- 構造
- 巨大な多核細胞で、通常10〜20個の核を持つ。
- 骨吸収の部位
- 骨表面の「ハウシップ窩(Howship’s Lacunae)」と呼ばれるくぼみに位置し、骨基質を分解する。
働き(骨吸収のメカニズム)
- 骨基質への付着
- 破骨細胞は骨表面に付着し、波状縁を形成する。
- 骨表面に「密着封鎖帯」を作り、分解部位を限定する。
- 酸の分泌
- プロトンポンプを介して、骨基質にH+(プロトン)を分泌。
- 酸性環境を作り、骨の無機質(主にヒドロキシアパタイト)を溶解する。
- 酵素の分泌
- カテプシンKなどのプロテアーゼ酵素を分泌し、骨基質のコラーゲンなどの有機成分を分解する。
- 吸収物の処理
- 分解されたカルシウムやリン酸を細胞内に取り込み、血中に放出する。
調節因子
破骨細胞の形成・活性は、以下の因子によって厳密に調節されている:
- RANKL(Receptor Activator of Nuclear Factor κB Ligand)
- 骨芽細胞などが分泌し、破骨細胞前駆細胞の分化と活性化を促進する。
- カルシトニン
- 甲状腺から分泌され、破骨細胞の骨吸収を抑制する。
- 副甲状腺ホルモン(PTH:パラトルモン)
- 骨吸収を間接的に促進し、血中カルシウム濃度を上昇させる。
- ビタミンD
- RANKLの発現を促し、破骨細胞の活性を間接的に高める。
病態における破骨細胞の役割
破骨細胞の異常な活動は、さまざまな骨疾患に関連する。
- 骨粗鬆症
- 破骨細胞の活動が骨芽細胞の活動を上回ることで、骨密度が減少し、骨が脆くなる。
- 多発性骨髄腫
- 破骨細胞が異常に活性化され、骨吸収が過剰になり、骨痛や骨折が生じる。
- ペジェット病
- 骨吸収と骨形成が異常に活発になり、骨の形状や強度が変化する疾患。
- 骨転移
- がん細胞が骨に転移すると、破骨細胞の活性が促進され、骨破壊が起こる。
治療と応用
破骨細胞の活動を制御することは、骨代謝異常の治療において重要である。
- ビスホスホネート
- 破骨細胞の骨吸収を抑制し、骨粗鬆症の治療に用いられる。
- デノスマブ
- RANKLを阻害するモノクローナル抗体で、破骨細胞の形成と活性を抑える。
- カルシトニン製剤
- 骨吸収を抑制し、急性骨痛の緩和に使用される。




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