プロスタグランジン(PG)は、脂肪酸から合成される生理活性物質で、ホルモン様の作用を持つ「エイコサノイド」と呼ばれる物質群の一種である。身体のさまざまな組織で合成され、多様な生理機能や病態に関与する。特に、炎症反応、痛み、発熱、血管の収縮や拡張に重要な役割を果たす。
化学的特徴
- プロスタグランジンはアラキドン酸(20炭素の不飽和脂肪酸)から生成される。
- 構造的に、5員環(シクロペンタン環)を含む脂肪酸誘導体であり、種類によって構造がわずかに異なる。
- COX(シクロオキシゲナーゼ)酵素によるアラキドン酸の代謝によって産生される。
種類と作用
プロスタグランジンは複数の種類に分類され、それぞれ異なる作用を有する。
1. PGE2(プロスタグランジンE2)
- 炎症:炎症反応を増強する(発赤、腫れ、発熱)。
- 発熱:視床下部の体温調節中枢に作用し、発熱を引き起こす。
- 痛み:神経を刺激し、痛覚を増強。
- 血管作用:血管拡張を促進。
2. PGI2(プロスタサイクリン)
- 血管拡張:血管を拡張し、血圧を下げる。
- 血小板凝集抑制:血液が凝固しにくくする(抗血栓作用)。
3. PGF2α(プロスタグランジンF2α)
- 平滑筋収縮:子宮平滑筋を収縮させ、分娩や月経痛に関与。
- 気管支収縮:気管支の平滑筋を収縮させる。
4. TXA2(トロンボキサンA2)
- 血小板凝集:血小板を活性化し、血栓を形成。
- 血管収縮:血管を収縮させる。
生成と代謝のメカニズム
- 生成:
- 細胞膜のリン脂質から放出されたアラキドン酸が、シクロオキシゲナーゼ(COX-1、COX-2)によって代謝されてプロスタグランジンとなる。
- 代謝:
- プロスタグランジンは短時間で代謝され、作用を終える。
- 代謝産物は主に尿中に排泄される。
生理的役割
- 炎症と免疫:
- 炎症部位での発赤、腫れ、発熱、痛みを誘発。
- 炎症の拡大や治癒過程の調節。
- 血圧調節:
- 血管拡張や収縮を調節することで血圧を維持。
- 消化器系:
- 胃粘膜保護作用を持ち、胃酸の分泌を抑制。
- 消化管の平滑筋運動を調整。
- 生殖系:
- 子宮収縮を促進し、分娩や月経に関与。
- 神経系:
- 痛みや発熱の調節。
- 睡眠や覚醒の調整に関与。
病態との関連
- 炎症性疾患:
- 関節リウマチや炎症性腸疾患など、過剰なプロスタグランジン産生が症状の悪化に寄与。
- 発熱:
- 細菌やウイルス感染による発熱反応は、PGE2の作用による。
- 血栓症:
- トロンボキサンA2(TXA2)の過剰活性化が血栓形成のリスクを増大。
- 胃潰瘍:
- プロスタグランジンが胃粘膜を保護するため、その欠乏は胃粘膜の損傷を招く。
薬理学的応用
- NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):
- アスピリンやイブプロフェンなどの薬剤は、COXを阻害してプロスタグランジンの産生を抑制。
- 痛み、炎症、発熱を軽減。
- プロスタグランジン製剤:
- PGE1製剤(アルプロスタジル):血管拡張薬として使用される。
- PGF2α製剤:子宮収縮薬として分娩誘発に使用される。




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