アセチルコリンは、神経伝達物質の一つで、神経系において信号伝達を担う化学物質でである。中枢神経系(脳や脊髄)および末梢神経系(体全体の神経)の両方で重要な役割を果たす。特に、副交感神経系の働きや筋肉の収縮、記憶、学習などに関与している。
特徴
- 構造:
- アセチルコリンは、酢酸(アセチル基)とコリンから構成されるシンプルな分子である。
- 生成:
- コリンアセチルトランスフェラーゼという酵素によって、コリンとアセチルCoA(アセチル補酵素A)から合成される。
- 分解:
- アセチルコリンエステラーゼという酵素によって、酢酸とコリンに分解される。この分解が速やかに行われることで、神経伝達の終了が調節されている。
役割と機能
1. 中枢神経系での役割
- 記憶や学習に関与し、特に海馬で重要な働きをする。
- アセチルコリンの低下は、アルツハイマー病などの認知症と関連している。
2. 末梢神経系での役割
- 筋肉の収縮:
- 運動神経末端から分泌され、骨格筋に作用して収縮を引き起こす。
- 副交感神経系:
- 心拍数の低下、消化管の運動促進、唾液や胃液の分泌促進など、生理的なリラックス反応を誘導する。
3. 自律神経系
- アセチルコリンは、副交感神経系の主要な神経伝達物質であり、平滑筋、心筋、腺の機能を調整する。
4. 神経筋接合部
- 運動ニューロンが筋肉と接続する神経筋接合部で放出され、筋収縮を引き起こす。
受容体
アセチルコリンは、2種類の受容体を介して作用する。
- ニコチン性アセチルコリン受容体(N受容体):
- 神経筋接合部や自律神経節に存在。
- 筋肉の収縮や交感神経系と副交感神経系の活動調節に関与する。
- ムスカリン性アセチルコリン受容体(M受容体):
- 副交感神経の終末に多く存在。
- 心拍数の減少、消化液分泌の促進、平滑筋の収縮などを制御する。
アセチルコリンの不足と過剰
- 不足:
- 記憶障害や学習能力の低下(アルツハイマー病に関連)。
- 筋力低下や神経筋疾患(例:重症筋無力症)。
- 過剰:
- 副交感神経の過活動による症状(例:唾液分泌過多、心拍数低下、平滑筋の過収縮)。
- 神経毒(例:有機リン系殺虫剤や神経ガス)によりアセチルコリンエステラーゼが阻害されると、アセチルコリンが過剰に蓄積する。
医学的利用
- 治療薬:
- アセチルコリンエステラーゼ阻害薬:アルツハイマー病や重症筋無力症の治療に使用される。
- ムスカリン受容体拮抗薬:副交感神経の過剰な活動を抑制するために利用される(例:喘息や胃潰瘍の治療)。
- 神経毒:
- 一部の毒素や薬剤(例:ボツリヌス毒素、神経ガス)はアセチルコリンの分泌や作用を阻害し、麻痺や生命の危機を引き起こすことがある。




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