1 血液の成分
血液は、液体成分(血漿)と有形成分(血球)に分けられる。血球には、赤血球・白血球・血小板が含まれ、いずれも共通の造血幹細胞に由来して分化する。血漿には、タンパク質(アルブミン・グロブリン・フィブリノーゲン)のほか、糖質、脂質、電解質、老廃物(尿素・尿酸・クレアチニンなど)が含まれるが、凝固因子も含まれている点に注意が必要である。
遠心分離を行う際、抗凝固薬(ヘパリンやEDTA-2Naなど)を加えて凝固を防ぐと液体成分として血漿が得られる。一方で、抗凝固薬を加えずに自然に血液を凝固させてから遠心分離すると「血清」が得られる。血清は、血漿からフィブリノーゲンなどの凝固因子を除いた液体成分である。
2 全血球数算定
血球数は、血液1μL(または1mm³)あたりに含まれる血球の数として示される。白血球・赤血球・血小板のいずれも低下する状態を「汎血球減少症」と呼び、骨髄機能の低下が疑われるため、さらなる精査が必要となる。
3 赤血球数(RBC)、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(Ht)
赤血球数は、一定量の血液に含まれる赤血球の個数を示すもので、1μL(=1mm³)あたりの数値で表される。ヘモグロビン(Hb)は、骨髄由来の赤血球内で「ヘム」と「グロビン」から構成される血色素であり、酸素の運搬に重要である。Hb量は、100mLの血液中に含まれるヘモグロビンの質量(g)で表される。
また、ヘマトクリット(Ht)とは、血液全体に対する赤血球が占める体積比率(%)を示し、貧血や多血症の評価に用いられる。
4 赤血球恒数(MCC:mean corpuscular constants)
赤血球恒数とは、赤血球数、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値の3つの数値から導き出される指標で、貧血のタイプを分類するために使用される。それぞれの関係性をもとに、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)が算出される。
5 白血球数(WBC:white blood cell count)
白血球は、好中球・好酸球・好塩基球(以上を顆粒球と総称)、さらに単球・リンパ球から構成されている。なかでも好中球は、桿状核球と分葉核球に分類され、どのタイプが増減するかによって基礎疾患の鑑別につながる。たとえば、重度の感染症では、健康成人の末梢血には通常見られない未熟な好中球(桿状核球)が出現することがあり、これは「核の左方移動」と呼ばれる所見である。
また、白血病では末梢血あるいは骨髄中に腫瘍性の異常白血球が増加することが特徴である。
6 白血球百分率(WBC differential count)
白血球は、顆粒球(好中球・好酸球・好塩基球)、リンパ球、単球に分類され、いずれも免疫防御において重要な役割を担っている。ただし、それぞれの機能や関与する病態が異なるため、どの種類の白血球が増減しているかによって疾患の鑑別に役立つ。
白血球百分率とは、白血球全体のうち各白血球が占める割合(%)を示し、末梢血塗抹標本の100個の白血球を分類して求める。
7 血小板数(PLT、PL:platelet count)
血小板は、骨髄中の巨核球の細胞質がちぎれて形成される血液成分のひとつである。一次止血に直接関与し、二次止血にも間接的に影響する。血小板数の減少は、産生の低下・破壊の亢進・脾臓への貯留などが原因となる。
8 出血凝固機構
血管内皮が損傷すると、血小板やフォルスマン因子(von Willebrand因子)が集合し、まず「一次止血」が開始される。次いで、組織因子により内因系や外因系が活性化され、最終的にフィブリン網が形成されて「二次止血」が成立する。このフィブリンは線溶系によって分解される。

9 出血時間
【概要と臨床的意義】
耳たぶに小さな切り傷をつけ、にじみ出る血液を約30秒ごとにろ紙で吸い取り、完全に出血が止まるまでの時間を測定する。この時間は、血小板血栓が形成されるまでの時間を意味し、主に血小板数や機能異常の影響を受ける。出血時間が進むにつれて、ろ紙につく血液の量が次第に減少し、最終的には全く付かなくなる(通常:3分以内が目安)。
10 プロトロンビン時間
【基本的な意義と特徴(臨床的意義)】
外因系および共通経路に関わる凝固異常のスクリーニング検査である。検査では、被検血漿にCa²⁺と組織トロンボプラスチン(組織因子)を加え、フィブリン形成までの時間(凝固時間)を測定する。
主に、以下の凝固因子の欠乏や異常を反映する
第I因子(フィブリノーゲン)
第II因子(プロトロンビン)
第V、VII、X因子
【INRとワルファリン療法】
INR(International Normalized Ratio)は、PT値を国際的に標準化した指標であり、抗凝固療法(ワルファリン)のモニタリングに用いられる。
INRの算出式:PT(INR)=(患者秒数 ÷ 正常秒数)ISI
※ISI:試薬ごとの国際感度指数
・ワルファリン投与中は、PT-INRを2.0〜3.0の範囲で維持することが推奨される。
11 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
【検査の意義と測定原理(臨床的意義)】
内因系および共通凝固系の異常を検出する代表的検査である。検体にあらかじめ活性化剤と部分トロンボプラスチン試薬(リン脂質)、およびCa²⁺を添加し、フィブリン析出までの時間を測定する。PT(プロトロンビン時間)と併用することで、欠損している凝固因子の経路を推定可能である。
12 D-ダイマー
【検査の意義】
D-ダイマーは、フィブリンまたはフィブリノーゲンがプラスミンによって分解される際に生じる産物の一部である。これらの分解産物全体はフィブリン・フィブリノーゲン分解産物(FDP)と総称され、そのうちの1つがD-ダイマーである。D-ダイマーは二次線溶系が活性化しているかどうかのマーカーとして用いられる。
【上昇の原因となる疾患】
播種性血管内凝固(DIC)
血管内での過剰な凝固と線溶が同時進行することで、D-ダイマーが著しく増加する。
13 脳脊髄液検査(髄液 一般検査)
【検査対象と臨床的意義】
脳脊髄液(髄液)は、脳室系やくも膜下腔、脊髄腔などに分布している無色透明な体液である。髄液の主成分は血液由来であることが多く、病的変化の反映として重要である。髄膜炎や脳炎などの感染症が疑われる際には、髄液検査は不可欠な診断手段である。さらに、脳腫瘍・頭蓋内圧亢進・脱髄疾患(例:多発性硬化症など)においても、病態把握に有用な情報を提供する。



















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