筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンが選択的に変性・脱落する進行性の神経変性疾患である。脳から脊髄、末梢神経へと伝わる運動指令が障害されることにより、全身の筋力低下と筋萎縮が進行する。感覚・認知機能は比較的保たれるが、最終的には呼吸筋麻痺により死に至る。
1. 病態生理
- ALSでは上位運動ニューロンと下位運動ニューロンが変性・脱落する。
- グルタミン酸の興奮毒性、酸化ストレス、異常タンパク質の蓄積、遺伝的要因が関与すると考えられている。
- 運動神経障害が主であるため、感覚障害は出現しにくい。
2. 症状
① 運動症状
| 障害部位 | 主な症状 |
|---|---|
| 上位運動ニューロン(錐体路障害) | 筋のこわばり(痙縮)、腱反射亢進、バビンスキー反射陽性 |
| 下位運動ニューロン(脊髄前角細胞) | 筋萎縮、筋力低下、線維束性収縮(筋のピクつき) |
| 脳神経(球麻痺) | 構音障害(呂律不良)、嚥下障害、舌萎縮 |
② その他の症状
- 感覚障害なし(末梢神経の感覚線維は障害されにくい)
- 認知機能は多くの症例で保たれるが、一部で前頭側頭型認知症(FTD)を合併する
③ 進行経過
- 初発症状は、手の筋力低下や足のつまずきが多い
- 進行すると四肢・体幹筋の麻痺が拡大し、呼吸筋障害が出現
- 最終的に人工呼吸管理が必要となる(呼吸不全による死亡が多い)
3. 診断
① 臨床所見
- 進行性の筋萎縮と筋力低下
- 上位運動ニューロン障害(腱反射亢進・痙縮)と下位運動ニューロン障害(筋萎縮・線維束性収縮)の混在
② 神経伝導検査(NCS)
- 運動神経の振幅低下(神経原性変化)
- 感覚神経は正常(多発ニューロパチーとの鑑別)
4. 治療
進行抑制療法
- リルゾール(Riluzole)
- グルタミン酸の興奮毒性を抑制し、生存期間を延長
- エダラボン(Radicut)
- 抗酸化作用により神経変性を遅らせる




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