甲状腺機能亢進症とは、甲状腺ホルモン(T3・T4)の分泌が過剰になり、全身の代謝が亢進する疾患である。
1. 原因
甲状腺ホルモン分泌が過剰になる原因として、以下の疾患が挙げられる。
① バセドウ病(Graves’病)【最多】
- 甲状腺刺激ホルモン受容体抗体(TSH受容体抗体, TRAb)が自己免疫的に甲状腺を刺激し、ホルモン分泌を促進する。
- 若年~中年女性に多い。
- 甲状腺腫大・眼球突出・頻脈(メルゼブルク三徴)が特徴的。
② 無痛性甲状腺炎・亜急性甲状腺炎
- ウイルス感染や自己免疫反応により、一時的に甲状腺ホルモンが血中に放出される。
- 一過性の甲状腺機能亢進症を呈するが、時間経過とともに自然回復する。
③ TSH産生下垂体腫瘍
- 下垂体腺腫がTSH(甲状腺刺激ホルモン)を過剰に分泌し、甲状腺ホルモンが増加する。
- 下垂体腫瘍による視野障害を伴うことがある。
2. 症状
① 代謝亢進による症状
- 発汗過多(多汗)・暑がり
- 体重減少(食欲亢進があるにも関わらず減る)
- 手指振戦(手の震え)
- 動悸・頻脈・心房細動
- 筋力低下(近位筋優位)
② 神経症状
- 精神的に興奮しやすくなる(イライラ・不眠・集中力低下)
- 手足の震え(振戦)
③ 甲状腺腫大・眼球突出(バセドウ病特有)
- メルゼブルク三徴(甲状腺腫・眼球突出・頻脈)
3. 診断
① 血液検査(甲状腺ホルモン・自己抗体)
| 項目 | バセドウ病 | 無痛性甲状腺炎 | TSH産生腫瘍 |
|---|---|---|---|
| TSH | 低下 | 低下 | 正常~上昇 |
| FT4(遊離サイロキシン) | 上昇 | 上昇 | 上昇 |
| FT3(遊離トリヨードサイロニン) | 上昇 | 上昇 | 上昇 |
| TRAb(TSH受容体抗体) | 陽性 | 陰性 | 陰性 |
② 甲状腺シンチグラフィー
- 甲状腺のヨウ素集積能を評価し、バセドウ病の診断に有用。
4. 治療
原因に応じた治療が必要である。
① バセドウ病
① 甲状腺ホルモン合成を抑える
- 抗甲状腺薬(メチマゾール、プロピルチオウラシル)
- 副作用:無顆粒球症(発熱・咽頭痛に注意)、肝障害
② 甲状腺の機能を低下させる
- 放射性ヨウ素治療
- 高齢者や薬物治療が無効な場合に適応
③ 外科的治療
- 甲状腺摘出術(大きな甲状腺腫がある場合)
② 無痛性甲状腺炎・亜急性甲状腺炎
- 自然寛解するため、β遮断薬(プロプラノロール)で症状を軽減
④ TSH産生下垂体腫瘍
- 下垂体腺腫の摘出手術(経蝶形骨洞手術)が第一選択




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