無毒性量(NOAEL)とは、動物実験や毒性試験において、観察されたどの用量でも有害な影響(毒性)が確認されない最大の摂取量や曝露量を指す。
1. 基本的な定義
- 意味: 「有害影響が現れない」用量。
- 用途: 人体への安全な摂取量や曝露基準を評価する際の基礎データとして用いられる。
- 単位: mg/kg体重/日(体重1kgあたりの1日の摂取量)。
2. 試験方法
- 動物試験:
- ラットやマウスなどの実験動物を用い、化学物質(食品添加物、農薬、汚染物質など)を様々な用量で与える。
- 影響評価:
- 生理的・病理的な指標(体重、血液検査、臓器の状態など)を用いて、有害影響の有無を判定する。
- 段階的用量設定:
- 複数の用量群を設定し、最も低い影響量(LOAEL)との間に位置する量を無毒性量(NOAEL)として決定する。
3. 用途
- 安全基準の設定:
- 許容一日摂取量(ADI)や耐容一日摂取量(TDI)を算出する際の基準値となる。
- 例: ADIは、NOAELを安全係数(通常は100~1000倍)で割って算出される。
- 規制基準の根拠:
- 食品中の化学物質や環境汚染物質の基準値設定に利用される。
4. NOAELの特徴
- 有害影響の定義:
- 毒性試験で観察される生理学的・行動学的な変化が「有害」と判断される場合。
- 軽微な変化(例: 一時的な体重増減など)は、有害影響に含まれないことがある。
- 限界:
- NOAELは試験で設定された用量範囲内に限定されるため、より低い影響量が存在する可能性もある。
- 試験動物から人間への外挿に伴う不確実性。
5. 関連する概念
- 最小毒性量(Lowest-Observed-Adverse-Effect Level, LOAEL):
- 実験で有害影響が確認された最小の用量。
- NOAELはLOAELよりも低い用量に設定される。
- 無影響量(No-Observed-Effect Level, NOEL):
- 「有害影響」に限らず、あらゆる影響が観察されない最大用量。
- NOAELは「有害性」に焦点を絞った値である点が異なる。




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