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幹細胞と前駆細胞

幹細胞という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
私たちの身体の中には、必要に応じて新しい細胞を生み出す「細胞のもと」が存在します。これが「幹細胞(stem cell)」です。
今回は、その幹細胞とそこから分化する「前駆細胞」について、基礎から応用まで整理して学びましょう。

1. 幹細胞とは何か?

幹細胞とは、自分自身を複製しつつ、別の細胞に分化できる能力を持つ未分化細胞です。幹細胞には次の2つの性質が備わっています

  • 自己複製能:自分と同じ性質を持つ細胞を複製できる

  • 分化能:特定の機能を持つ細胞へと変化(分化)できる

例えば、造血幹細胞であれば、白血球・赤血球・血小板などすべての血液細胞に分化可能です。

2. 幹細胞の分化レベルによる分類

幹細胞は「どこまで分化できるか」に応じて次のように分類されます。

  • 全能性幹細胞:受精卵のように、胎児だけでなく胎盤などの付属器官にもなれる

  • 多能性幹細胞:体内のあらゆる組織に分化できる(例:ES細胞、iPS細胞)

  • 単能性幹細胞:1つの種類の細胞にしか分化できない(例:表皮幹細胞)

3. 組織幹細胞と体の維持

多くの成体組織(例:皮膚、腸管、骨髄)には、「組織幹細胞」と呼ばれる幹細胞が存在しており、細胞が損傷した際や寿命を迎えた際に、新たな細胞を補う役割を果たしています。組織幹細胞は通常、「非対称性細胞分裂」を行います。これは、一つの幹細胞が分裂して

  • 1つは同じ幹細胞として残り

  • もう1つは特定の機能をもつ細胞(または前駆細胞)に分化する
    という形式です。これにより、幹細胞プールを維持しながら組織を補修することができます。

4. 前駆細胞とは何か?

幹細胞から分化した細胞のうち、ある程度の分化能力を持つが、自己複製能力はほとんどない細胞を「前駆細胞(progenitor cell)」と呼びます。

前駆細胞は幹細胞と異なり、「短期間に大量の特定細胞に分化する能力」に特化しており、体の中での細胞供給を加速する役割を担います。たとえば、造血幹細胞から分化した「リンパ球系前駆細胞」は、さらにB細胞やT細胞へと分化します。同様に、血球系前駆細胞は好中球・赤血球・血小板などの血球系細胞へと分化します。

5. 幹細胞と前駆細胞の違い

項目 幹細胞 前駆細胞
自己複製能 あり(持続的) 限定的または一時的
分化能 多系統に分化可能(多能性あり) 特定系統に限られる
造血幹細胞、ES細胞、皮膚幹細胞 リンパ球系前駆細胞、神経前駆細胞

6. 人工多能性幹細胞(iPS細胞)

iPS細胞とは、体細胞に特定の4つの遺伝子を導入することにより、多能性を再獲得させた人工の幹細胞です。ES細胞と同様にあらゆる組織に分化可能であり、かつ倫理的な問題が少ないことから、再生医療・創薬の分野で非常に注目されています。

たとえば、患者自身の皮膚細胞をiPS細胞化し、それを神経や網膜、心筋細胞などに誘導して移植することで、拒絶反応のない治療が期待されています。

まとめ

  • 幹細胞は自己複製能と分化能を持つ未分化細胞で、体の維持・修復に関わる

  • 幹細胞から分化した前駆細胞は、自己複製はほとんどせず、特定の細胞に速やかに分化する

  • 幹細胞はその分化能により「全能性」「多能性」「単能性」に分類される

  • iPS細胞は人工的に作られた多能性幹細胞で、医療応用の中心的技術となっている

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