1 筋ジストロフィー
【概要】
骨格筋が繰り返し壊され再生される過程を経て、徐々に筋萎縮や筋力低下が進行する遺伝性疾患である。
【分類】
発症時期により、先天性筋ジストロフィー(出生時から症状)と進行性筋ジストロフィー(幼児期以降に症状)に大別される。進行性タイプには、代表的なX連鎖劣性遺伝疾患であるデュシェンヌ型(重症)やベッカー型(軽症)があり、いずれもジストロフィン遺伝子の異常によって発症する。
【検査】
筋破壊に伴い、血中クレアチンキナーゼ(CK)、LDH、AST、ALTが上昇する。重症例ではミオグロビン尿が認められる場合もある。
【治療】
現時点で根治療法はなく、対症療法が中心となる。関節拘縮や脊柱変形予防のため、早期から理学療法を開始する。デュシェンヌ型では副腎皮質ステロイド(例:プレドニゾロン)やビルトラルセンの投与により症状進行を抑制する試みが行われる。
2 ギラン・バレー症候群
【概要】
末梢神経に軸索変性が生じる自己免疫性ニューロパチーで、脳脊髄液ではタンパク細胞解離を呈する。発症前に先行感染を伴う例が多く、約70%にみられる。内訳は上気道感染が約60%、消化管感染が約20%であり、特にカンピロバクター・ジェジュニによる食中毒が重要な原因とされる。先行感染の症状は非特異的で、風邪症状や下痢など軽度のことも多い。全年齢層に発症しうるが、男性にやや多い傾向がある。
【分類】
脱髄型、軸索型、混合型に分類され、カンピロバクター・ジェジュニ感染後は軸索型が多い。
【症状】
・先行感染から約4週以内に発症
・両側性の弛緩性運動麻痺
・腱反射消失
・軽度の感覚障害
症状は通常4週間以内にピークに達し、その後徐々に改善する。
【検査】
臨床症状と病歴で診断
血清抗ガングリオシド抗体(特に抗GM1抗体)陽性
脳脊髄液検査でタンパク細胞解離
【発症のメカニズム】
①:腸管感染(例:カンピロバクター・ジェジュニ)
②:免疫応答が活性化し、形質細胞が抗体を産生
③:産生された抗ガングリオシド抗体が末梢神経の髄鞘や軸索に結合
④:脱髄や軸索変性が進行し、神経伝導が障害される
【治療】
・血漿交換療法
・経静脈的免疫グロブリン(IVIG)療法
3 重症筋無力症
【概要】
重症筋無力症は、神経筋接合部シナプス後膜に存在するニコチン性アセチルコリン(ACh)NM受容体に対する自己抗体(抗ACh受容体抗体)が産生されることで発症する自己免疫性疾患である。
この抗体により神経筋接合部での刺激伝達が妨げられ、筋収縮が起こりにくくなる。20〜40歳代の女性に多く、男性では高齢期に発症がみられることもある。
【発症機序】
抗ACh受容体抗体がNM受容体を阻害
→ AChが結合しにくくなり、筋への刺激が伝わりにくくなる。
【症状】
初発症状として多いのは外眼筋障害(眼瞼下垂・複視)であり、そのほか四肢筋力低下、嚥下障害、重症例では呼吸筋麻痺を伴う。日内変動が特徴的で、午前中は軽症でも午後から夕方にかけて増悪する傾向がある。
【検査】
(1)抗体測定
抗アセチルコリン受容体抗体
:80〜85%の症例で陽性
抗筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体
:一部症例で陽性
(2)塩化エドロホニウム試験
静脈内注射で症状が一時的に改善すれば陽性
塩化エドロホニウムは短時間作用型のコリンエステラーゼ阻害薬であり、治療目的では用いない










コメント