ポビドンヨードは、ヨウ素を有効成分とする消毒薬であり、広範な抗菌スペクトルを持つ。医療、衛生、食品、外科手術などの分野で広く使用されている。
1. 化学的性質
- 化学式: (C6H9ON)n・xI
- 分子量:可変(ポリマーのため一定ではない)
- 性状:赤褐色の液体または粉末
- pH:弱酸性(約pH 2.5~5.5)
- 安定性:光や熱に対して比較的安定
ポビドンヨードは、水溶性ポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)にヨウ素を結合させた化合物である。
このポリマーがヨウ素を徐放し、持続的な殺菌作用を示す。
2. 作用機序(殺菌・消毒メカニズム)
ポビドンヨードの殺菌作用は、遊離ヨウ素(I₂)の酸化作用による。
- 細胞膜の破壊
- 細菌やウイルスの細胞膜のリン脂質やタンパク質と結合し、構造を変性させる。
- エンベロープを持つウイルスに対して特に効果的。
- タンパク質・酵素の不活化
- 細胞内の酵素や核酸を酸化し、代謝を阻害する。
- 細菌・ウイルス・真菌の増殖を防ぐ。
- DNA・RNAの損傷
- ヨウ素は核酸の塩基と反応し、遺伝情報を破壊することで病原体の増殖を抑える。
3. 抗菌スペクトル
ポビドンヨードは、多くの微生物に対して有効な消毒薬である。
✅ 効果があるもの
- 細菌(グラム陽性菌・グラム陰性菌)(MRSA、大腸菌、緑膿菌など)
- ウイルス(エンベロープあり・なし)(インフルエンザ、COVID-19、ノロウイルス)
- 真菌(カンジダ、アスペルギルスなど)
- 原虫(アメーバなど)
⚠ 効果が限定的なもの
- 芽胞形成菌(炭疽菌など)は、通常の濃度では不活化が困難。
- 有機物(血液・膿など)の影響を受けにくいが、長時間放置すると効果が低下する。
- HCV、HBVに対して十分な効果が得られないことがある。
4. 用途・応用
ポビドンヨードは、医療、衛生、食品、外科、口腔ケアなど多くの分野で使用されるが、金属製器具には使用できない。
① 医療分野(傷口・手術・皮膚消毒)
- 手術前の皮膚消毒 10%
- 創傷・火傷の消毒
- 眼科・耳鼻科での使用(低濃度)
- 膣洗浄(婦人科領域) 7%(希釈して用いる)
② 口腔ケア(うがい薬)
- うがい薬としての使用
- 歯科治療時の口腔消毒
③ 手指・皮膚消毒
- 医療従事者の手指消毒(7.5%)
- 患者の皮膚消毒(インフルエンザ・新型コロナ対策)
5. 使用上の注意点・副作用
① 甲状腺機能への影響
- ヨウ素は甲状腺ホルモンの合成に関与するため、長期・頻回の使用で甲状腺機能異常(バセドウ病、橋本病)を引き起こす可能性がある。
- 特に妊婦・小児・甲状腺疾患のある患者では注意が必要。
② アレルギー反応
- ヨウ素アレルギーを持つ人では、皮膚発赤、かゆみ、アナフィラキシーを起こす可能性がある。
③ 結膜炎・角膜障害(眼科使用時)
- 高濃度(5%以上)では、角膜に刺激を与えるため、眼科使用時は低濃度(0.5%以下)に調整する。
④ 傷口への使用に関する注意
- 深い傷・広範囲の火傷に使用すると、組織障害を起こす可能性があるため注意が必要。
6. ポビドンヨードと他の消毒薬の比較
| 消毒薬 | 抗菌スペクトル | 皮膚刺激性 | 使用用途 | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|
| ポビドンヨード | 細菌・ウイルス・真菌 | 低い(粘膜OK) | 創傷・手術・うがい | 甲状腺への影響あり |
| エタノール(アルコール) | 細菌・ウイルス | 高い(乾燥作用) | 手指消毒・環境消毒 | 粘膜不可 |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 細菌・ウイルス・芽胞 | 高い(腐食性) | 環境消毒(器具・床) | 酸と混ぜると有毒 |
| クロルヘキシジン | 細菌・真菌 | 低い | 手指・手術前消毒 | ウイルスには弱い |




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